第255話 夏休みの楽しみ方
ティーテとともに楽しい夏休みを満喫していたある日、屋敷に来客が。
「やあ、バレット」
「元気だったか?」
やってきたのはジャーヴィスとアンドレイだった。
実を言うと、ふたりとは――というより、生徒会メンバーとは前々からある約束をしていたのだ。
「待っていたよ、ふたりとも」
「元気そうで何よりです!」
俺とティーテ、そしてユーリカはサレンシア王国への短期留学報告会以来の再会とふたりと軽く世間話をしてから、両親にジャーヴィスとアンドレイが迎えに来たと声をかけてから屋敷を出る。ちゃんと事前に説明をしておいたから、すんなり事は運んだ。
さて、生徒会のメンバーと向かうのはこの先にある小高い丘。
そこではとても綺麗に星が見えるらしく、学園が再開される前にそこで集まって盛り上がろうということになっていた。
俺たち以外にも、アンドレイとクライネ辺りは近くに別荘がある。かつてはジャーヴィスやマデリーンもここで夏を過ごしていたが、レクルスト家とハルマン家があんなことになってからは、短期留学終了後、学園に残るつもりだったらしい。
だが、クライネから招待されて今はそちらで過ごしているという。
あとはラウルだが……
「ラウルはどうしている?」
「昨日からうちへ来たよ。今はマデリーンと一緒に先乗りして場所取りをしてもらっているんだ」
ラウルはアンドレイの別荘にいるようだ。
俺たちはのどかな田舎道をのんびりと進んで行く。
家柄の良い若者たちが集うということで、周りには護衛がついている。メイド以外はこちらに気を利かせてくれているらしく、表立ってその姿を見せていない。だが、確実にその場で警戒態勢を取っているというのは気配で伝わってきた。
そんな中、ユーリカはやけにそわそわしている。
最初はなぜだろうと思ったが――なんてことはない。ラウルに会えるのが楽しみで待ちきれないのだ。
分かるなぁ……。
俺も休みの前半にティーテがいなかった時は落ち着かなった。姉夫婦がいちゃつき倒しているのを目の当たりにし続けたことも影響していたのだろうが……まあ、原作におけるふたりの結末を知っている身としては、存分にいちゃついてもらって構わないと思ってはいるのだが、さすがに連日見せつけられては胸焼けもしてくるというものだ。
そうこうしているうちに、目的地へと到着。
すでにラウルとマデリーン、さらにクライネの友人(恋人?)のメリアも到着していた。
「あら、随分と遅かったじゃない」
「この辺りの景色を楽しみながら歩いていたからな」
「……あなたの口から景色を楽しむなんて言葉が出て来るなんて……」
未だに原作版の影がチラついているクライネ。
ただまあ、昔ほど取り付く島もないってわけじゃない。
「さあ、今日は外でご飯を食べるぞ!」
「早速用意をしましょう!」
アンドレイとマデリーンが口火を切り、食材を焼くための準備を開始。言ってみれば、これはこの世界流のバーベキューだな。
「私たちも手伝いましょう、バレット」
「おう」
賑やかになった輪に、俺とティーテも加わる。
今日は楽しい夜となりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます