第252話 家族団欒
レイナ姉さんとアベルさんが帰宅し、これでようやく全員集合となった。
……本来ならば、ここにティーテもいるはずだったのだが、家の用事があるというなら寂しいけど仕方ないな。
「ティーテがいなくて寂しそうね、バレット」
ディナー後にみんなでくつろいでいると、心の中を見透かされているかのように姉さんがそんな話題をぶっこんでくる。
「まあ……否定はしないよ」
「あらあら、本当に仲良くなったわね」
自分で話題を振っておきながら、レイナ姉さんはため息を交えながらあきれ気味に言う。最初から返答分かっていたくせに。
そんな俺たち姉弟の様子を見ていた父上が、おもむろに口を開いた。
「アロンソ殿も楽しみにしていたのだが……急な用件らしくてな。なんでも、人に会うと言っていたが」
人に会う、か。
あのアロンソ様がそう言うくらいだから、本当に外せない重要な件ってことだろう。それにしても……一体どんな用件なんだろうか。
ふと脳裏に浮かんだのは――以前の立てこもり事件だ。
あの時は現生徒会のみんなでティーテを救出するために現場へ向かったんだったな。あれからもう一年近く経つのか……時の流れは本当に速いと感じるよ。
――って、思い出に浸っている場合じゃない。
「その人って、一体どんな人物なんですか?」
「詳しいことは何も言っていなかったな。……心配するな。以前のようなことが起きないように、彼らの周辺警備は強化されている。ブランシャル王国としても、アロンソ・エーレンヴェルクを失うのは避けたいからな」
相変わらず俺は感情が顔に出やすいらしく、父上にも考えをあっさりと見抜かれてしまい、そのフォローをされた。
でも……よかった。
エーレンヴェルク家の警備が強化されたということは、それだけティーテも安全だってことだからな。
その後、話題は俺たち姉弟の近況報告へと移った。
レイナ姉さんは騎士団としての活動と、最近あった同級生との一件が話題となった。
同級生の女性は考古学者を目指しているらしいが、ブランシャル王国には調査中の遺跡がないということで、別大陸だがドゥーリフ地方にあるジェイレムという観光地で大規模な遺跡調査が行われているという情報を教えると、喜んでそこへ旅立っていったという。
「彼女ならば、きっと世界的な考古学者になると思うよ」
姉さんはそう言って自身の話を締めくくった。
続いて、俺が会長を務める新生徒会について。
苦労はしているが、同時に楽しめているということを話すと、前生徒会長である姉さんも「分かるなぁ」と共感してくれた。
そんな団欒の中で、俺はある存在を思い出していた。
新入生のピラールについてだ。
彼女は原作におけるラウルのハーレム要員のひとり。
だが、今のところ目立った接点があるわけではない。
まあ、今のラウルは原作と違い、本来なら敵対関係となってしまう初恋の相手ことユーリカと仲睦まじくやっているからな。今さら他の誰かが入り込む余地なんてないだろう。
となると、あと問題なのは最後のひとり。
彼女は一体いつ頃姿を見せるのか。
――まっ、今のラウルとユーリカの仲を見る限り、深く思案したところで徒労に終わるのは目に見えている。
きっと、このままふたりともうまくいくさ。
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