第251話 帰省
久しぶりに戻ってきた実家で、三日ほどのんびりすることとなった。
「いや~、学園の寮もいいけど、やっぱり実家が一番だよなぁ~」
「ふふふ、そうですね。今、お茶をお持ちします」
「ありがとう、マリナ」
ティーテがうちにやってくるのは三日後になった。
ただ、そうなると思い出されるのはあの立てこもり事件。あの時はエーレンヴェルク家が某所へ出かけており、その出先で起きた事件だった。さすがに今回はそのようなことがないようにしているのだろうけど……ちょっと心配だな。
今回の里帰りには、ティーテと夏のひと時を楽しむため。
ちなみに、他の生徒会メンバーもそれぞれ夏休みを満喫するため実家へ戻っている。
しかし、ラウルだけは違った。
どうやら、ラウルは今回の件を深く反省しているらしい。
というのも、俺が黒幕の存在に気づいて倉庫街へ行った時、自分はその存在にまったく気づけなかったことにショックを受けているらしかった。
あれはまあ、聖剣の持つ力の副産物と言えばいいのか……いずれにせよ、ラウルが悪いわけではないと説明したのだが、
『バレット様……それでも僕は己の未熟さを痛感しました。今年の夏は師匠に一から鍛え直してもらうつもりです』
生真面目というかなんというか……まあ、その辺が原作でモテる要因になっていたのは間違いない。違うことといえば、こっちの世界ではハーレムを形成していないってところだな。
「どうぞ、バレット様」
「いただくよ」
俺はマリナが淹れてくれたお茶を口にする。相変わらず、俺の子のみを完璧に把握しているな。さすがは長らく専属メイドをやっているだけはある。
と、その時、部屋の外が賑やかになってきた。
「来客かな?」
「きっと、レイナ様たちが戻られたのでは?」
「あっ、もうそんな時間か。――よし、俺たちも行こう」
「はい」
今回の帰省では、ティーテとのひと時と同じくらいに楽しみとしていることがあった。
それは――レイナ姉さんとアベルさんの結婚報告だ。
とは言っても、ふたりはすでに婚約済みなのだから今さらする必要はあるのかって思われそうだが……今回は少し違う。
何せ、正式に結婚式の日取りが決まったのだ。
本来はもっと遅くなる予定だったのだが、俺とティーテが卒業と同時に結婚することでほぼ確定となったため、「それよりも早くに式を挙げた方がいいのでは?」という話になっていたらしい。
ただ、式を挙げても姉さんは騎士団に残るらしい。
アベルさんとのコンビは今や評判らしく、騎士団としても手放したくない人材であるというのは事実らしい。弟の俺が言うのもなんだが、レイナ姉さんは美人だし、剣の腕前は超一流と来ている。男性だけでなく、女性からの支持も多いのだ。
姉さん自身も、騎士団の仕事には誇りを持っていて、これからも続けていきたいと願っている――が、同時に、いずれはアベルさんとの間に子どもをもうけて母になりたいという願望もあるとのこと。
まあ、姉さんならどっちも叶えられそうだな。
俺はマリナたちメイド三人娘を引き連れて一階へと向かう。
そこで、ちょうど姉さんとアベルさんに出くわす。
「やあ、久しぶりだな、バレット」
「元気にしていたかい?」
「はい!」
姉さんもアベルさんも表情は晴れやかで、日々が充実していることが透けて見える。
さて、これからふたりにはたっぷりと惚気話を聞かせてもらおうかな。
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