第241話 短期留学最終日

 サレンシア王国のランドルフ学園で行われた短期留学も、いよいよ本日が最終日。

 この日は学園の予定を大幅に変更して、俺たちの送別会が行われることになっている。


「それじゃあ、行ってくるよ」

「お気をつけて!」

「マリナとは学園前で合流する予定となっておりますので」

「分かった」


 俺にとっても、ようやく自然体で振る舞えるようになったこのランドルフ学園を去るのは寂しいが、この国が故郷であるマリナはもっと寂しいだろうな。レベッカやプリームの話では、メイドになってからほとんど家に帰っていないと言っていたし。


 そんなことを考えているうちに、ティーテと合流。


「いよいよ今日が最後ですね」

「ああ。最初来た時は長いと思っていたけど、あっという間だったな」

「ホントですねぇ」


 しみじみと、この学園での思い出に浸る俺とティーテ。

 学園ダンジョンや深夜の学園内で目撃された怪しいふたり組については、結局俺たちに詳しい説明がなされなかった。あれ以降、特に目立って怪しい動きなどはなかったから、問題ないと判断したのかな。


 とにかく、無事に役目を終えてブランシャル王国へ帰れるのだ。

 まずは俺も実家に戻って、父上と母上に報告をしなくては。



 この日、俺たちはまずホールへと集められた。

 今日はここでお別れのセレモニーを行い、午後になったらブランシャル王国を目指して学園を去るという運びだ。


 そのお別れセレモニーは盛大に行われた。

 学生たちによって結成された楽団の演奏だったり、魔法を駆使したパフォーマンスを見せてくれたり、ランドルフ学園のみんなは俺たちを楽しませようといろいろな出し物を披露してくれた。


 最後に、それぞれへ感謝状と友好を記念したメダルが贈られて式は終了。

 それから食事会をしてから、俺たちはブランシャル王国へ戻るための馬車へと乗る。


「今度は私たちがそちらへ行きますね」

「楽しみにしています」


 互いの学園の生徒会長である俺とアンネッテは固く握手を交わした。

 予定では、今秋の学園祭にランドルフ学園の学生を何人か招待することになっており、その際、寮にも泊まってもらう予定だ。夏の長期休校が終わったら、それに向けた準備も進めていかないと。ここの学生たちは素晴らしいものを見せてくれたんだ。うちも負けてはいられないぞ。


 気合を入れ直し、馬車の準備が進められている学園の正門前で待機していると、


「「バレット様!!」」


 そこへ、レベッカとプリームの血相を変えて走ってくる。

 プリームはともかく、いつも冷静なあのレベッカがあそこまで取り乱しているなんて……一体、何があったんだ?


「どうしたんだ、ふたりとも」

「そ、それが……」

「マリナが行方不明になったそうです!」

「な、なんだって!?」


 帰省しているはずのマリナが姿を消した。

 真面目な彼女のことだから、サボるってことはなさそうだけど……もしかして、久しぶりに故郷へ来たものだから少し感傷的になっちゃったか?


「仕方ない。俺だけ少し遅れていくよ」

「し、しかし!」

「マリナが心配だ。これから捜しに行こうと思う」

「私も手伝いますよ、バレット!」


 話を聞いていたティーテが立候補した。

 となれば、専属メイドであるユーリカも同行する。さらに、ユーリカが心配だからとラウルも志願した。


 というわけで、ジャーヴィス、アンドレイ、マデリーン、クライネの四人には先にアストル学園へと戻ってもらい、残った俺たちでマリナの行方を追うことにしたのだった。

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