第239話 ラウルの予感
本日は短期留学先のランドルフ学園で座学の授業を受ける。
こちらも、俺たちが普段通うアストル学園とはまた違った良さがあり、とても充実した時間を過ごせた。
午前中の授業終わり、昼休みのためみんなで食堂へと移動中、俺は今朝から気になっていたラウルの様子の真意を確かめるため、話しかける。
「なあ、ラウル。何か気がかりでもあるのか?」
「えっ?」
「いや、どうにも朝から様子がおかしかったから」
「……さすがはバレット様ですね。なんでもお見通しだ」
「ははは、さすがになんでもってわけじゃないけど――仲間に何かあったのなら、力になりたいと思っただけさ」
「バレット様……」
これは嘘偽りのない、俺の心からの想いだ。
それはしっかりラウルへと届いたようで、
「実は夕べ……見たんです」
「見た? 何を?」
「怪しいふたり組の男を」
「!?」
ふたり組の男って……俺とマデリーン、そしてアンネッテが学園ダンジョン内で見かけたあの男たちなのか?
ただ、ラウルはその男たちの顔を見ていないので、昨夜学園で見かけたという怪しい男たちが同一人物であるかは確認できなかったという。単純に、学園関係者が夜の見回りをしていたという可能性もなくはないが、ラウル曰く、そのような雰囲気とは違い、なんだか学園内を物色して回っているように映ったという。
もし、ここがアストル学園であったのなら、ラウルは躊躇なくその男へ声をかけにいくのだろう。しかし、ここは他国の学園。厄介事に首を突っ込んだ結果、国際問題を引き起こしてしまうかもしれないのだ。
ラウルはその辺の事情に配慮し、男の特徴を記憶にとどめておく限りとした。
「とりあえず、テシェイラ先生には報告をしておいた方がよさそうだ」
いきなりランドルフ学園の教師に話を持っていくより、ここは同行しているアストル学園のテシェイラ先生の意見を仰ぐことにしよう。
昼食後。
残った昼休みで俺とラウルはテシェイラ先生のもとを訪れた。
ちなみに、他のみんなはランドルフ学園の学生たちと中庭に向かった。俺とラウルも用件を済ませたら合流する予定だ。
「なるほど……不審者か」
テシェイラ先生はなんとも言えない微妙な表情で唸る。
やはり、いくら先生でも行動はだいぶ制限されているみたいだな。
とはいえ、昨日ダンジョンであんなことが起きた以上、スルーしておける案件でもないと判断し、こちらで対処をしておくという返事だった。
恐らく、現状ではそれが限界なのだろう。
先生もまた、アストル学園とは違う環境に戸惑いがあるように映った。
一方、俺たちは俺たちで警戒をしていくことにした。
派手に聖剣の力を使うようなことはできないが、非常事態に備えておくのは当然のことだろうし、それくらいは許されるだろう。
というわけで、今後の方針を簡単に決めて中庭へと向かうと、
「あっ! バレット~! こっちですよ~!」
鮮やかな花で作られた冠を頭に乗せたティーテが俺たちを手招きしている。
一瞬、本物の天使かと思ったぜ。
まあ、今はこの時間を楽しむとしますか。
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