第236話 危機一髪?
最悪のタイミングでやってきたマデリーン。
「だ、誰だ!?」
「今の……女の子の声っすよ!」
当然、ヤツらもマデリーンの存在に気づく。同人、マデリーンの方も、俺以外の誰かがこの空間に存在していると察知したようだ。
「えっ? 誰かいるんですか?」
しかし、その声には危機感がない。恐らく、学園の関係者だと思っているのか。この流れなら、まさか第三者が潜んでいるなんて思わないだろうな。そもそもここは学園の敷地内にあるダンジョンなわけだし。
って、のんびりそんな分析している場合じゃない。
「来るな! マデリーン!」
「えっ?」
とにかく、非常事態が起きていることを知らせる必要があると思い、俺は大声で叫んだ。俺自体の存在を知られるリスクはあるが、何も知らずに近づいてきたマデリーンが襲われるなんてことになるよりはマシだ。
「!? まだガキがいたのか!?」
向こうにも俺の存在を気づかれるが、狙い通りにマデリーンへ緊急事態発生を教えることができた。
「先輩! あの人たちは!?」
「分からない! けど、味方ってわけじゃなさそうだ!」
マデリーンと合流し、敵の襲来に備える。
……できれば、戦闘は避けたい。
なぜなら、ここは俺たちの住むブランシャル王国ではなく、隣国のサレンシア王国だ。下手に騒動を起こして国際問題に発展でもしたら……せっかく消滅しかけていた破滅シナリオが復活する恐れさえある。
今にも飛びだしていきそうなマデリーンを押さえつつ、敵の出方を待つ。
すると、
「兄貴、どうします!?」
「……仕方ねぇ。退くぞ」
「えっ!? で、でも、まだ必要量に達してませんぜ!?」
「うるせぇ! ここでもたついて他の連中まで集まってこられる方がずっと厄介だ。さっさと逃げるぞ!」
「へ、へい!」
俺の祈りが通じたのか、男たちはこちらに攻撃を加えることなく撤退していった。もし、この場に居合わせたのが他国からの留学生だと分かれば、下手に手出しができない分、危なかったかもしれない。
「い、今の人たち……一体何者でしょうか」
「皆目見当もつかないな。……ただ、人に見つかって逃げだしたんだ。バレたらまずいことをしていたのは間違いない」
「ですねぇ……」
これは早急に学園側へ通達しなければならないだろうな。
それから、俺たちはアンネッテのもとへと戻り、救助を待つ。
すると、ほどなくして浮遊魔法を使って穴の底へとテシェイラ先生やランドルフ学園の教師たちがやってくる。
俺たちは無事に救助され、ダンジョンの外へと出たが、ティーテたちとの再会を喜ぶまもなく例のふたり組について報告を行った。
「むぅ……そんなことが……」
報告をしたのは、ランドルフ学園でアンネッテたちの学年をまとめている学年主任の男性教師。彼はしばらく腕を組んで唸り、やがて「とりあえず学園長に報告をする」と告げてその場をあとにした。
「本当に……心配したんですからね」
「ああ。すまなかった、ティーテ」
俺は涙声になっているティーテを抱きしめながら囁く。
本当に心配だったみたいだな……。
ティーテへの想いに感動している俺だったが――その後、今回の事件は想定していなかった方向へと進んでいくとは、この時は夢にも思っていなかった。
…………………………………………………………………………………………………
新作を投稿しました!
「風竜の力を宿した少年は世界最強の風魔法使いとなる。」
https://kakuyomu.jp/works/16816927860199657582
コンテスト用なので5~6万文字ほどの中編を予定しています。
よろしくお願いいたします!<(_ _)>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます