第235話 ダンジョンに潜む者たち
俺たちがたどり着いたダンジョンの底。
それまで、誰も足を踏み入れたことのないという空間で、俺たちは救助が来るまで待機することとなった。
「まさかこんな空間が存在していたなんて……」
俺たち以上にアンネッテの方が驚いていた。
……無理ないか。
彼女たちにとって、ここは日頃トレーニングを行う場としても活用されている。通い慣れたはずのこの空間に、一歩間違っていたら死ぬかもしれないような空洞があったのだ。動揺するのは当然だ。
ただ、俺たちも現状を楽観視しているわけじゃない――このような空洞が一ヵ所だけとは限らないからだ。もし、ティーテや他の仲間たちにも同じような事態が起きていたら……そう考えると、俺は居ても立ってもいられなかった。
「なんとかして上れないかな」
「えっ? ここをですか?」
驚いた声を出したのは一緒に落下したマデリーンだった。
「浮遊魔法でも使えれば可能かもしれませんが……」
「さすがに三人同時には難しいか」
先に俺が地上まで上がって、下にいるふたりを引っ張り上げるっていう手段も考案したが、深さからいって、上から見下ろしたらふたりの姿を確認できないだろう。魔法をかける対象の位置が定かでないとうまく発動しないため、結局ボツとなった。
すぐには気づいてくれなくても、そのうちいなくなったことに気づくはず。まあ、今日中には戻れるだろう。
とりあえずは待つより他に手段はないと結論付けた――その時、
「先輩! こっちに通路がありますよ!」
落ちた先の空間を調べていたマデリーンが叫ぶ。
通路?
ということは……上からこの場所にたどり着くルートがあるかもしれない。
「どうしますか?」
「……少し、様子を見てくる」
アンネッテとマデリーンのふたりをその場へ残し、俺は聖剣に手を添えながらゆっくりと通路を進んでいく。まっすぐ伸びたそこを進んでいると、やがて広い空間へとたどり着いた。
「こ、ここは……」
青白く発光する鉱石があちこちに見受けられ、時々聞こえる水滴の垂れる音がなんとも言えない不気味さを醸しだしていた。
もしかしたら、このダンジョン、マップに描かれているよりもずっと広いのではないだろうか――そんな仮説が脳裏に浮かぶほど、そこは広大な空間であった。
何よりあの魔鉱石の数……全部を売りにだしたら相当な高値になりそうだな。
「これについても教えた方がよさそうだな」
魔鉱石の輝きに見惚れていると、突然、何者かの気配を感じた。慌てて近くの岩陰に身を潜め、様子をうかがっていると、
「本当に声がしたのか?」
「へ、へい。ガキの声がしたと思ったんですが……」
「聞き間違いだろう。それより、さっさと作業を始めるぞ。今日中に運びださなくちゃいけねぇ量は多いんだから」
「よりによってそんな日にダンジョン演習があるなんて……ツイてないっすね」
「構うかよ。どうせ連中はここの存在に気づいちゃいねぇんだから」
……不穏な会話だな。
もう少し話を聞こうとしていたら、
「先ぱ~い! みんなが救助に来てくれましたよ~!」
最悪のタイミングでマデリーンが俺を呼びに来てしまった。
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