第232話 実戦形式の授業
ランドルフ学園で過ごす初めての夜は、旅の疲れもあったのか意外とすんなり寝付くことができた。
夜が明けると、俺たちはランドルフ学園の学生たちとともに朝食をとり、一時間ほどの座学を経て実戦形式の授業へと移る。
「ランドルフ学園の座学……とても興味深かったです」
「やはり、アストル学園とは少し違うな」
「そもそもテキストが違いますからね」
ティーテ、ジャーヴィス、ユーリカの三人は楽しげに授業を振り返る。
その一方で、
「ようやく体を動かせますね」
「ホントね」
「この時を待っていたぜ!」
マデリーン、クライネ、アンドレイのどちらかというと肉体派トリオは実戦形式の授業が始まると聞いて生き生きとし始めた。
「やれやれ……ついこの前、試験でやったばかりなのに」
「で、でも、あの時とは違ってランドルフ学園の学生が相手ですからね」
ため息交じりに呟くに俺に、ラウルがフォローを入れてくれる。
俺たちが想像する実戦形式の授業とは、定期試験でやったように学生同士が一対一で戦うものであった。てっきり、このランドルフ学園でも同じ手法がとられていると思ったのだが……どうやら違うようだ。
案内されたのは俺たちが試験で使っていた広い空間ではなく、近くの森の中。さらに進んでいくと、案内役の教師が足を止めたのは大きな岩壁にあるダンジョンの入口前であった。
そう。
実戦形式の授業の舞台となるのは――なんとダンジョンだった。
「が、学園の敷地内にダンジョン!?」
これにはたまらず驚いた。
予想の遥か斜め上を行く展開だ。
そこへ、同行していた生徒会長であるアンネッテがやってきて、この学園ダンジョンについての説明をしてくれた。
「ランドルフ学園で実戦形式といえば、この学園ダンジョンを用いたものなんですよ」
「学園ダンジョン……」
「安心してください。ダンジョン内には先生方も一緒に入りますし、そもそも出現するのは弱いモンスターばかりです。みなさんの実力ならば、問題なく突破できるでしょう」
アンネッテの説明を耳にして、俺たちはホッと胸を撫で下ろす。
完全に安心というわけではないが、それでもかなり手厚い保証があるようだ。
……とはいえ、あんな風に言われたら、是が非でもこのダンジョンを攻略したくなった。
ちなみに、ダンジョンの成功条件は最奥部に設置された宝箱の中から合格を意味する魔鉱石を持ってくることだった。
「ふむ。合格条件把握したが――どうする?」
ジャーヴィスがそう尋ねてくる。
「……本来、こちらの学生たちはどのような条件でダンジョンに?」
「三人一組のチームとなって挑みます」
「では、俺たちもその決まりに従いましょう」
三人一組――アストル学園からの留学生は全員で八人のためひとり足りなくなるが、そこにアンネッテが加わることになり、合計三チームでの参加となった。
厳正なくじ引きの結果、チーム分けは次の通り。
Aチーム
・バレット
・マデリーン
・アンネッテ
Bチーム
・クライネ
・ティーテ
・アンドレイ
Cチーム
・ラウル
・ユーリカ
・ジャーヴィス
以上の三チームだ。
ティーテと別れてしまったのは残念だが、まあ、会長と副会長が同じチームっていうのもちょっと変だしな。
「怪我なく頑張ってくれよ、ティーテ」
「バレットの方こそ、無茶して怪我をしないようにしてくださいね」
むむむ。
ティーテにそう言われては仕方がない。
今回はチームメイトのマデリーンとアンネッテにお任せしようかな。
ダンジョン探索に向かうとは思えない、なんとも和やかな空気が漂う中、いよいよ実戦形式の授業が始まった。
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