第230話 ランドルフ学園へ

 ついに検問を越えて、サレンシア王国へと入った俺たち。

 早速、王都内にあるというランドルフ学園へと向かうことになった。


 サレンシア王都。

 そこは、ブランシャル王都にも負けないくらいの賑わいを見せている。


「人がたくさんいますね」

「近年は観光業が盛んになっているらしいから、きっと国民だけでなくその観光客も多いんだろうな」


 観光業に力を入れるのは、雄大な大自然に囲まれているサレンシア王国ならではと言えるだろう。下手な産業より、よっぽど収入がありそうだ――そう思えてしまうくらい、この国は自然豊かだと思う。



 王都の様子を楽しんでいるうちに、学園へと到着。

 そこではすでに多くの教職員や学生がお出迎えをしてくれた。


 学園の正面広場に馬車をとめ、外へ出ると、真っ先に数人の学生たちがこちらへとやってくる。

 その先頭を行くのは女子だった。

 キリッとした顔つきで向かってくる女子――可愛いというよりも美人って表現が似合う子だった。


「長旅お疲れさまでした」


 その美人学生は俺たちの前まで来るとペコリと丁寧に頭を下げた。


「私はこのランドルフ学園生徒会会長で、アンネッテ・フランコーナと申します」

「どうも。アストル学園生徒会会長のバレット・アルバースです」


 やはり、先頭の子が生徒会長だったか。

 俺は彼女と自己紹介をし、握手を交わす。

 それから、うちの生徒会&学園騎士団の面々と挨拶をしていき、それの区切りがつくとアンネッテと副会長の男子学生マルゼのふたりに校舎内へ案内された。


 学園の規模は俺たちの通うアストル学園と大差ない。

 しかし、気になったのは校舎の新しさであった。


 古くからあるという中央校舎以外に全部で四つあるのだが、そのすべてが最近建てられたばかりのように綺麗なのだ。

 気になったのでアンネッテ会長へ尋ねてみると、


「確かに、中央校舎以外はまだ完成して五年ほどです」

「えっ? じゃあ、一気に四つも校舎を増やしたと?」

「観光業の成功で財政に余裕が出てきたらしく、さらに移住してくる人が増えたため、これを機に大々的に教育改革を行ったと聞いています。この頃、他国からの移住してくる人が増えたとも言われていますし」


 なるほどね。

 そういった事情があったのか。 

 となると、今回の短期留学もその教育改革とやらの一環ってわけか。


 伝統あるアストル学園と、新進気鋭のランドルフ学園。


 対照的な両学園だが、教育にかける情熱という点では似ているのかもしれない。

 しばらく歩いていると、中庭へと出た。

 そこには色とりどりの花が植えられており、ちょっとした庭園になっている。


「わあっ!」


 こうなると、当然真っ先に反応したのはティーテだ。

 もっとよく花を見ようと駆けだしたティーテを追って、専属メイドであるユーリカがついていき、クライネやジャーヴィス、マデリーンといった他の女性陣も関心があるようで、瞳を輝かせながら庭園を眺めている。

 植物に関心のないラウルやアンドレイでさえ、手入れの行き届いた庭園に「凄いな」と声を揃えて驚いていた。


「見事ですね」

「ありがとうございます。うちの自慢の庭園なんですよ」


 マルゼ副会長が嬉しそうに言う。

 確かに、これくらい綺麗なら誇ってもいいよな。

 庭園を眺めていた俺は、庭園にあるひとつの像へと目がとまる。


「うん? あれは……」


 そこにあったのは――ドラゴンの像だった。

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