第227話 勝負の行方
約一年ぶりに実現した俺とラウルの戦い。
共闘して、何度もピンチを乗り越えてきたけど、こうして剣を交えるのは本当に久しぶりなので、どこか新鮮ささえ感じてしまう。
肝心の勝負の流れ――まず、一発目はドローという形に終わった。
さて……次はどう出るか。
本来ならば、もう少し慎重に立ち回るのだが、これはあくまでも試験。このままにらみ合いを続けていては、あっという間に持ち時間が終わってしまう。あまりにも消極的な戦いをしていると、評価は上がらないからな。どちらからでも構わないから、仕掛けないと。
「……だったら」
俺は聖剣に魔力を込める。
それを合図だと悟ったラウルも、同じように魔力を込める。
再び激突する聖剣と魔剣。
強大な魔力同士のぶつかり合いに、周りは警戒。
だが、俺とラウルには笑みがこぼれていた。
やっぱり……ラウルは「ライバル」って感じだ。
ふと、俺の脳裏に原作の流れがよぎる。
原作のバレットはラウルの素質を見抜いていた。聖剣使いである自分の存在を脅かすほどの実力を有しているラウルを、バレットは「潰す」という選択肢をチョイスした。
結果として、ラウルは聖騎士クラウスさんへ弟子入りした後、ティーテとともにバレットを倒した。
――あの時、バレットがラウルの実力を認め、仲間として接することができたなら……原作の流れも大きく変わっていただろう。
ただ、それができないからこそ、バレットは「ざまぁ要員」なのだ。
「バレット様――行きます!」
「来い! ラウル!」
けど、この世界では違う。
原作では敵対していたバレットとラウル――だが、ここではともに戦い、互いを高めることができる最高のライバルであり、友なんだ。
「はあっ!」
「むうっ!」
ラウルの一撃を、俺は真っ向から受け止める。
さっきは払いのけるだけだったが、今回は正面からの激突――巻き起こる衝撃も、比べ物にならないほどだ。
「うおおおおおおおっ!」
「はあああああああっ!」
ともに退かず、ぶつかり合いはしばらく続き、とうとう互いの魔力同士が弾け、俺とラウルは吹っ飛んだ。
「うわっ!」
「ぐっ!」
今回の勝負もまた引き分けに終わった。
俺はすぐさま起き上がり、戦闘態勢を取る。それはラウルも同じで、俺が立ちあがった時には向こうもすでに準備万端であった。
「「…………」」
もう俺たちの間に言葉はない。
見つめ合い、「ふっ」と小さく笑って再び距離を縮めていく。
そして、もう一度ぶつかり合おうとした――その直後、
「そこまで!!!!!」
大きな声が、演習場に響き渡る。
俺とラウルの実戦を止めたのは――アビゲイル学園長だった。
学園長はさらに、
「バレット・アルバースとラウル・ローレンツの試合はそこまでとする!」
そう高らかに宣言した。
「えっ!? で、でも、まだ時間が――」
「これ以上演習場がボロボロになったら、次の試合が行えなくなるわ」
抗議した直後にそう言われて、俺は周りへと目を向ける。
そこには、俺とラウルの戦いによって刻まれた爪痕がいくつも散見できる――なるほど。確かにこのまま続けていたら、周辺が穴だらけになって試験どころじゃなくなるな。
「はあ……残念だが、ここまでのようだ」
「そうみたいですね」
ラウルも残念そうな顔をしている。
……うん。
決めた。
冬季の実戦試験の際には、俺とラウルが再戦できるように学園長へかけ合ってみよう。
こうして、夏休みを前にした実戦試験は幕を閉じたのであった。
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【お知らせ】
カクヨムコン参加中の「言霊使いの英雄譚」ですが、予定を早めて来週の12月25日(土)より投稿を再開いたします。
よろしくお願いいたします!<(_ _)>
https://kakuyomu.jp/works/16816452220998947767
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