第226話 再戦! バレットVSラウル

 原作ではほとんどなかったティーテの戦闘描写。

 そういったわけで、原作でのイメージはティーテ=非戦闘要員とする者が多かった。

 何を隠そう、俺もそのひとり。

 

 というか、原作ではレイナ姉さんやテシェイラ先生がラウルのパーティーに名を連ねていたから、わざわざティーテが戦う必要はなかったのだ。役割は回復士ヒーラーだが……バトル展開が続くと、どうしても出番が少なくなる。ティーテの存在が薄れていったのも、それが原因のひとつだろうな。


 しかし、こちらの世界でのティーテはとてもたくましく成長している。

 無理に戦う必要がないというのは原作と変わらないが、それでもティーテは自ら望んで力をつけようと努力していた。この辺は原作版ティーテよりも前向きだな。


 ティーテとクライネの激闘は、周りの学生たちだけでなく、観戦しに来ていた騎士団のメンバーをも驚かせた。

 結果としては引き分けだが、あの調子ならふたりとも合格できるだろう。


 さて……問題は次だ。


「続いて、バレット・アルバースVSラウル・ローレンツの試合を行います!」


 いよいよやってくる、俺とラウルの試合。


「バレット様……」


 開始直前、ラウルは声をかけてきた。

 その瞳には闘志の炎が揺らいでいる。


「勝たせてもらいます」


 そして、自信満々に言い放った。


 去年――魔剣の力が暴走したことで、ラウルは落ち込んでいた。

 しかし、そこからは原作の通り、聖騎士クラウスさんに弟子入りを果たすと、魔剣の持つ強大な魔力を自在に操れるようになり、大活躍。今では学園騎士団の一員として名を連ねるまでになった。


 そんなラウルとの再戦……俺も熱望していたんだ。


「そう簡単にはやられないぞ」


 俺がそう返すと、ラウルは「ふっ」と小さく笑い、手を差し出す。それを握り返すと、互いに距離を取って開始の合図を待った。


「はじめっ!」


 実戦試験が始まると同時に、ラウルが動く。


 一瞬にして目の前から姿が消えたかと思うと、すでに俺との距離を詰めて魔剣を振りかざしていた。

紫色に光る魔剣の魔力――一見すると禍々しささえ感じてしまうが、その魔力はしっかりとラウルに力を貸している。以前のように暴走して、周囲に害を及ぼすような気配は一切感じられなかった。

 ここまで使いこなせるようになったのか。


「はあっ!」


 渾身の一撃が繰り出される――が、


「ふん!」


 俺は聖剣でそれを払いのける。


 魔剣と聖剣。


 異なる魔力を放つふたつの剣がぶつかり合うと、凄まじい衝撃が走る。


「やるな、ラウル。以前よりも格段に強くなっている」

「ありがとうございます。……でも、まだまだバレット様には及びません」


 言うが、その瞳にはあきらめの色など毛ほどもない。

 ラウルの闘志は死んでなどいなかった。


「す、凄いな」

「これが学園騎士団の実力か……」


 俺とラウルの戦いを目の当たりにして呆然とする騎士団の面々。

唯一、クラウスさんだけは「俺の弟子は凄いだろ?」と周りの騎士たちに自慢していた。まるで父親だな……いや、年齢的には弟への愛が強すぎる兄って方がしっくりくるか。


 ともかく、一発目はドローに終わった。

 まだまだ試験は始まったばかり――本番はここからだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る