第224話 ティーテの実力

【お知らせ】


 新作を投稿しました!


「引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて小国の離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~」


https://kakuyomu.jp/works/1177354054896085495


 メインテーマは【スローライフ&開拓】!

 のんびりまったりしつつ、トラブルに巻き込まれてしまう主人公の明日はどっちだ!

※カクヨムコン7参加作品です。応援よろしくお願いいたします!<(_ _)>



…………………………………………………………………………………………………





 ティーテVSクライネ――この試験における注目カードのひとつが、今まさに始まろうとしていた。

 両者ともに戦闘特化ではないものの、アストル学園に在籍している以上、この手の試験は避けられない。つまり、どのような条件であっても、最低限の戦闘力は求められるのだ。


「ティーテ……」


 防御魔法が施され、安全が確保されているとはいえ、心配は尽きない。

 原作【最弱聖剣士の成り上がり】の中で、ティーテの戦闘描写が描かれていたシーンを思い出そうとしたのだが、まったく記憶になかった。


 ラウルのハーレム要員となったメンツを思い出せば、わざわざティーテが畑違いの戦闘魔法を使って攻撃に参加するってこと自体少なかったからな。物語が進むほどにティーテの出番がなくなっていったのは、そうした「動かしづらいキャラ設定」というものがあるのだろう。


「はじめっ!」


 審判役の教師が戦闘開始の合図を送る。

 途端に、ティーテとクライネの全身を魔力が覆った。


「いくわよ、ティーテ!」


 先手を打ったのはクライネ。

 放つ魔法の属性は――「雷」だ。


 俺たちのいる光属性クラスは、努力次第でこの世界にあるすべての属性魔法を網羅できると言われている。

 確か、クライネはこの前、今のところ三つの属性を使いこなせると言っていたな。あの雷魔法は、その三つのうちのひとつってわけか。


「はっ!」


 魔力によって生みだされた雷は、まるで矢のように伸びてティーテを狙う。

 これに対し、標的となったティーテは不動。

 飛んでくる雷の矢を前に、臆した表情冴え見せない。


 やがて、その矢がティーテの目前まで迫ると、突然「バチッ!」という音とともに雷の矢が綺麗サッパリ消失した。ティーテ得意の防御魔法が発動したのだ。


「なっ!?」


 驚愕するクライネ。

 ただ、防御魔法に関しては原作でも「超一級品」と言及されている。

 仲間を守る力に特化したティーテの魔法。

 それは同時に、己自身を守る最強の盾でもあったのだ。


「凄いな。まるで何事もなかったかのようだ」

「クライネ様の魔法も決して弱いものではありませんでした……ティーテ様の防御魔法を打ち破るには、相当な威力の攻撃でなくてはダメですね」


 ジャーヴィスとユーリカはティーテをそう分析した。

 婚約者として、非常に鼻が高いわけだが――問題はここから先にあった。


 防御と回復に優れた魔法。

 この場にいる誰もが知っているティーテの特徴だ。


 しかし、それはあくまでも防御手段であって攻撃手段ではない。

 この試験では、その攻撃手段も問われるのだ。


 昨年までの試験であれば、自身の得意とする魔法のみでなんとかなった。最高学年となり、卒業が近づいたことによってより実戦に近い力が求められる。

 

「ティーテ……」


 苦手としている攻撃魔法で、どうクライネに立ち向かうのか。

 そのクライネはすでに次の魔法を仕掛けようとしている。


「頑張れ、ティーテ!」


 腹の底から声を出して、ティーテに声援を送った。

 俺の声を聞いたティーテは一瞬こちらを向いてニコッといつもの微笑みをくれる。


 どうやら、自信はあるようだが……どうするつもりなんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る