第207話 マデリーンの憂鬱
大きなショックを受けているマデリーンとともに生徒会室へとやってきた俺とティーテ。
――と、いうわけで、早速マデリーンから落ち込んでいる原因を聞こうか。本人も喋りたいらしく、「話題を振ってくれ」と言わんばかりにさっきからこちらを何度もチラ見していることだし。
「そうだ、マデリーン。神授の儀の結果は――」
「聞いてくださいよ、先輩!」
食い気味に飛び込んでくるマデリーン。
よっぽど腹に据えることがあったのだな。
で、その理由というのは、
「私は先輩の聖剣やラウル先輩の魔剣みたいに剣がよかったんですよ!!」
自分の希望するアイテムを授けられなかったことに対してだった。
しかし、マデリーンが引き当てた盾もかなり貴重な物らしく、後から来たジャーヴィスの情報によると、すでに職員室では話題沸騰中なのだとか。
そのアイテムとは、圧倒的な防御力を誇る《聖花の盾》。
正直、勢い任せに突っ込んでいく癖があるマデリーンにはうってつけのアイテムだと思うのだが、本人は納得していない模様。
「うぅ……私は前衛でバリバリ戦う方が得意なのに……」
「だからそのアイテムなんじゃないか?」
「えっ? どういうことですか、バレット先輩」
「マデリーンはむ――勇敢だから、臆することなく敵に立ち向かっていけるけど、時にはその勇気が致命的なミスにつながることもある」
「うっ……」
一瞬、「無鉄砲」って言いそうになったけどなんとか回避に成功する。というか、マデリーン自身もその辺は自覚があったのか。
「そうですねぇ。アツくなると周りが見えなくなってしまうこともありますからねぇ」
「武闘大会の時も、勝てると思って油断した結果、ラウルの強烈なカウンター返しを食らって敗北していたしな」
「……アンドレイ先輩が知的な指摘をするなんて……」
「どういう意味だ!」
そこまで知的でもない気がするけど――って、ツッコミは無粋な気がするので控えておくとしよう。
その後、会計担当のクライネや広報担当のパトリックといった残りのメンバーも集結し、第一回目となる生徒会&学園騎士団合同生徒議会が開かれた。
議題は学生の安全について。
先日、ティーテが巻き込まれたあの暴動事件がきっかけとなり、学園での防犯体制も見直され、より強固な守りとなった。それでも、学生たちが外出許可を取って町に出た際など、何かしらのきっかけで事件に巻き込まれる可能性も否定できないため、俺たちの方でも対処をしていくことになった。
まあ、悪党連中にはティーテの救出作戦の際に披露した実力が知れ渡っているだろうから、俺たちが動けばむやみやたらに仕掛けてくることはないだろう。仮に、こちらへ仕掛けてくるというなら迎え撃つまでだ。
議会に参加している学園騎士団や生徒会のメンバーは学園でも屈指の実力者たちが揃っている。下っ端くらいならわけなく蹴散らせるだろう。
おまけに、今度の休みにはあるイベントが行われるということで、多くの学生が外出許可を求めていた。
「今度の休日は国王陛下の生誕祭が行われるため、多くの学生が王都への外出許可を出している。もちろん、騎士団による警備は厳重なのだろうが、念のため俺たちも出て、周囲を見張ろうと思う」
国王陛下生誕祭。
去年も一応あったが、俺とティーテは不参加だった。
一体どんな祭りなのか……ちょっとだけ興味があるな。
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