第205話 この世界を知る者
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ティーテが出会ったという不思議な新入生。
その口ぶりから、ティーテがラウルのハーレム要員となる「原作」の世界を知る者である可能性が高いと思われる。もちろん、現状では断言できるほどの証拠はない。まったく別の意味で言ったのかもしれないし。
いずれにせよ、直接本人にあって聞く必要があると判断した俺は、もう少しティーテから容姿に関する情報を聞きだそうとした。
「その不思議な子って、女の子か?」
「はい」
「どんな髪の色をしていたんだ?」
「えっと、オレンジでしたね」
「身長はどれくらい? ティーテよりも大きい?」
「…………」
「? ティーテ?」
話の途中で、ティーテは突然黙ってしまった。
そして、
「……そんなにその子のことが気になりますか?」
頬を膨らませ、そう言った。
「!?」
……俺としたことが、なんたる失態だ!
ティーテはその辺の事情を一切知らないんだから、俺が女子のことをそんな風に聞いてしまえば怪しまれても仕方がない。
「ち、違うんだ、ティーテ! 俺は!」
慌てて取り繕うとするが、あまりにも予想外な事態だったため言葉がまったく出てこない。その間も、ティーテはそっぽを向いている。
まずいまずい。
焦る俺はさらにドツボへとハマり、困り果てる。
――と、
「……ふふ」
小さな笑い声が漏れ聞こえた。
「ティ、ティーテ?」
「ご、ごめんなさい、バレット。まさかそんなに慌てふためくなんて」
笑いをこらえているような声で語るティーテ――なるほど。そういうことか。
「……謀ったな?」
「ちょっとからかってみたくなって」
ペロッと舌を出しながら、ティーテはいつもの笑顔を見せてくれた。
……こういうやりとり、昔じゃ考えられないよな。最初に会った時なんて、獰猛な野獣を前にしたような顔つきだったし。
「私はバレットのことを信じていますから。その子の情報を知りたいのだって、本当は何か異変を察知したからなのでしょう?」
「あ、ああ、その通りだ」
さすがはティーテだ。
俺のことを本当によく理解してくれている。
「気になったんだ。『あなたは幸せになれたんだ』って……」
「確かに、私はバレットと仲良くなれて今とても幸せですが……あの言い方だと、私以外の人が不幸になっているように感じますね」
もっといえば、去年までのバレット――つまり、原作版バレットとの関係が大きく変化したことを知っていたことになる。まあ、兄か姉が学園にいて、そういう情報を手にしているという線もあるが、油断は禁物だ。
そして、ティーテの言っていたこともまたひとつの懸念材料だ。
少なくとも、俺がかかわっている人物に限っては、目に見えて不幸な状態に陥っている者はいないと思われる。
ジャーヴィスやマデリーンの実家は消滅したけど、あれは自業自得だし、子どもたちふたりは新たな人生を謳歌しようとしているし、これはちょっと違う気がする。
とすれば……俺がまだ接触していない原作の重要人物になるのか?
もしくは――俺――というか、バレット・アルバース自身?
明日から始まる新学期。
俺たちにとって、学園で過ごす最後の年。
それを平穏無事で終えるためにも、不穏分子はしっかりと取り除いておく必要がある。
見つけて、真相を聞きださないとな。
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