第202話 入学式準備
ウォルター先生から今日一日の予定を聞いた後、俺たちの学年は講堂で入学式の会場準備に取りかかる。
生徒会長に就任して二度目の仕事ってわけだが、その仕事量は――
「多い……」
思わずそう呟いてしまうほどだ。
副会長のティーテや生徒会メンバーに名を連ねるクライネにラウル、さらにはウォルター先生にテシェイラ先生とたくさんの支えがあってなんとかこなしていけるレベル……これをほぼ全部ひとりでやっていたレイナ姉さんの凄さを改めて思い知った。それに比べて俺は――
自分の不甲斐なさに落ち込んでいると、
「そう気負うな。おまえの姉のレイナだって、最初から全部起用にこなせていたわけじゃないんだ」
ウォルター先生はそうフォローを入れてから、優しく俺の肩を叩く。
「そうだったんですか?」
「まあな」
「でも、彼女は頑張り屋さんだったから、最後まで会長としての職務をまっとうできたのよ」
横からヒョコっと顔をだしたテシェイラ先生から追加される情報……ちょっと信じられないなぁ。レイナ姉さんといえば、完璧超人ってイメージが強いし、家でもそれが崩れることはない。ドジったり怠けたりって行動がこれほど似合わない人はいないだろうってくらいだったのだが……実際は違うらしい。
「しかし、おまえが学園に来てからは、より『しっかりしなくては』と思ったようで、そこからはミスもなくなっていったな」
「確かに、バレットくんが来てから変わったわね」
俺の学園入学がきっかけ……なのか?
その辺は、今度実家に帰った時にでも直接本人から聞いてみようかな。今は騎士団にいるから、そう滅多には帰ってこないだろうけど。
「おまえも十分よくやっているよ、バレット」
「そうね。去年と比べたら信じられない成長よ」
「はい! バレットは大きく成長しています!」
「あははは……」
思わず乾いた笑いがこぼれる。
一年前の俺といえば……そりゃひどかったからな。特に婚約者であるティーテはそれを強く感じていることだろう。何せ、最初はたった一分の遅刻でビクビクしていたからなぁ……かつてはティーテのミスに怒鳴り散らしていたかと思うと、怒りが湧いてくる。
すると、そこへ、
「バレット様!」
「ちょっといいかしら」
やってきたのは生徒会メンバー入りを果たしたラウルとクライネだった。
「どうかしたのか?」
「学園長から、バレット様にこれを渡してほしいと頼まれたので、持ってきました」
「えっ? 学園長が? 一体なんだろう」
「新入生の名簿らしいわ」
名簿、か。
そういえば、どんな子が入るのか知らなかったな。……まあ、名前を聞いただけじゃピンとこないだろうけど。
そう思いつつ、もらった名簿に書かれている名前に目を通していくと――
「うん?」
ひとりの新入生の名前に目が留まる。
その名は――ピラール・アゼヴェード。
「ピラール……」
聞き覚えのある名前だ。
――それもそうだろう。
だって、この子は……原作で、ラウルのハーレム要員だった子だから。
「? どうかしたんですか、バレット様」
「っ! い、いや、なんでもないよ。さあ、そろそろ作業を再開しようか」
「「「おぉ!」」」
「はっはっはっ! 若いっていうのはいいなぁ!」
「まったくだわ」
和やかな空気で入学式準備は再開されたが……俺は心中穏やかではない。
あの悪夢の直後に、残りふたりとなっている原作ハーレム要員の登場。
これは……なんだか嫌な予感がするな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます