第199話 生徒会室にて
卒業式の後片付けのため、一部学生は式が終わった後も校舎に残って作業をしていた。
もちろん、俺たち新生徒会や学園騎士団の面々も後片付けに精を出している。
姉さんは、このあとアベルさんの家族も交えて食事会を開くらしい。
俺も招待されているが、その食事会は夜ということで少し時間が空く。それまでは、校舎に残って、生徒会の仕事やみんなの手伝いをしようということになった。
「今日くらいはゆっくりすればいいのに」
「真面目ですねぇ、先輩は」
閑散とした生徒会室で引き継ぎ用の書類を整理している俺に、来室早々そんなことを言うジャーヴィスとマデリーン。
「生徒会長の席……座り心地はどうだい?」
「悪くないよ」
「あっさりしてますね~」
「いつまでも浮かれているわけにはいかないからな。俺がしっかりやらないと、姉さんが安心して嫁にいけないだろうし」
「十分よくやっていると思うけどね」
「むしろ先輩ほど忙しなくしている人なんていないんじゃないですか?」
生徒会と学園騎士団。
マデリーンの言う通り、二足のわらじを履くことになっただけでなく、両組織でトップの位置に立った今では、確かに学生の中で一番忙しい立場なのかもしれない。
しかし、それは同時にやりがいと充足感を与えてくれる。
頼りになる仲間たちもいることだしな。
「厳しい現状であることは承知しているが……みんながいてくれるから、不安なんてないさ」
「ふふっ、いつでも頼ってくれ」
「パシリでもなんでも喜んでやらせていただきますよ」
「ははは、その時が来たらお願いしようかな」
三人で談笑していると、そこへさらなる参加者が。
「失礼します」
ドアをノックし、俺が「どうぞ」と返事をしてから入ってきたのは――ティーテだった。
「おっと、それでは僕たちふたりはお暇しようか」
「ですねぇ。お邪魔虫はクールに去りますよ」
ティーテと入れ違う形で、ジャーヴィスとマデリーンは生徒会室から出ていこうとする――と、ジャーヴィスが部屋を出た後、マデリーンは急に振り返って、
「あっ、先輩」
「うん?」
「この部屋なんですけど、会議の内容とかが外に漏れ聞こえないようにしっかりとした防音対策が施されているって話を聞きました。よほど大声を出さない限り、中で何をやろうがバレませんよ?」
「……マデリーン」
「失礼しました~」
やりきったと言わんばかりのニヤニヤ顔で生徒会室を出ていくマデリーン。
神聖な生徒会室でするわけないだろうが。
「? マデリーンの言っていたことはどういう意味なんでしょうか?」
「知らなくていいよ、ティーテ。……どうか、君は今のままの君でいてくれ。
「は、はい」
そうとも。
純粋なティーテはこのまま純粋でいてもらいたい。
「それより、俺に何か用があって来たんじゃないのかい?」
「えっ? あぁ……」
ここへ来た理由を尋ねたのだが、どうも歯切れが悪い。
しばらくすると、
「……理由はないです」
「えっ?」
「い、いえ! まったくないわけじゃなくて……バ、バレットに会いたいなぁと思って……それで、気づいたらここに……」
「…………」
俺は意識が吹っ飛びそうになるのをなんとか踏ん張ってこらえた。
そういえば、今日は夜になると外出して寮にいないからな、俺。
ティーテもそれは知っているはずだから……
「分かったよ、ティーテ」
「バ、バレット?」
「迎えの馬車が来るまで、俺はここにいる。そうだな……明後日から始まる新しい学園生活のことについて話そうか」
「! は、はい!」
俺の提案に笑顔で乗ってくれたティーテ。
それから馬車が来るまでの間、俺たちは生徒会室でこれからのことをいろいろと話し合ったのだった。
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