第192話 学園関係者
大広間では、武装した悪党たちが床に寝転がっていた。
もちろん、これはラウルとユーリカの功績。
あのふたりが組めば、そこら辺のチンピラみたいな連中に負けはしないだろう。
「!? ティーテ様!?」
「ユーリカ……よくやってくれました」
「そんな……ご無事で何よりです!」
ティーテの危機を知らせてくれた今回の功労者であるユーリカは、ティーテからお褒めの言葉をいただき感涙。婚約者である俺としても、今回のユーリカの頑張りは勲章ものだと思うので、しっかりとお礼を言っておく。結果、ユーリカは恐縮しっぱなしの状態となった。
さらに、
「「ティーテ!」」
「お父様! お母様!」
ティーテのご両親――アロンソ様とリリア様も無事だった。
ふたりだけでなく、人質として捕らえられていた貴族たちは漏れなく全員が無傷で救出されることとなる。
……って、まだ気が早いな。
外の様子はまだ分からないし、増援が来るとしてもまだ時間はかかるだろう。
とりあえず、この場にいる暴動グループの連中は拘束魔法で動きを封じておくとして、あとはアンドレイたちの応援に行ってくるか。
大広間をラウルたちに任せ、俺は単独で屋敷の外へと出た。
目的はアンドレイ、ジャーヴィス、マデリーンの援護だったが……
「あれ? いない?」
屋敷の周りには三人の他、あれだけいた見張りの兵士も見当たらなかった。
「おかしいな……」
何やら漂いつつある不穏な空気を裂くように、俺は歩を進めていく――と、
「バレット!」
最初に声をかけてきたのはアンドレイだった。その後ろにはジャーヴィスとマデリーンの姿もある。よかった。三人とも無事だったようだ。
「姿が見えなかったから心配したぞ」
「すまない。……武装した見張りの兵士たちの中に、ちょっと気になる者が紛れ込んでいたのでね」
「気になる者?」
「アストル学園の卒業生ですよ」
「なんだって!?」
マデリーンの口にした情報は、到底信じられるものではなかった。
俺たちの通うアストル学園を卒業した者が暴動グループにいたなんて……もしかしたら、今回の件で情報を提供したのはそいつかもしれないな。
「本当なのか?」
「昨年卒業した学生で間違いないよ。彼とは同じ委員会に所属し、よく一緒に仕事をしたからね」
ジャーヴィスがきっぱりと言い切った。
……だとすると、これは今後荒れそうなネタになりそうだ。
ただでさえ、学園祭以降、レクルスト家やハルマン家のような反逆行為に当たる行動をした者の取り締まりに対してナイーブになっているというのに、貴族を人質にとって暴動を起こしたグループの一員に、名門と名高いアストル学園の卒業生がいたなんて……下手をしたら、学園の存続にかかわる大問題じゃないか?
だからといって、報告しないわけにはいかない。
「……クラウスさんには、俺から報告をするよ」
「そうしてもらえると助かる」
どうやら、ジャーヴィスも今回の件は抱えきれない問題だという認識があるらしい。……まあ、ジャーヴィスとマデリーンのふたりは口にしづらい話題だよな。
「とにかく、人質となっていた人々は全員無事保護できた。――アンドレイとマデリーンはこのことを伝えに行ってくれ」
「分かった」
「応援を連れてくればいいわけですね?」
「ああ。よろしく頼むよ」
俺がそう指示を出すと、ふたりは早速ダッシュで屋敷をあとにする。
「俺たちは屋敷の周辺を見張ろう」
「了解だ」
俺とジャーヴィスはこのまま敵の増援がないか、その場にとどまって見張りをすることにした。
こうして、俺たち学園騎士団は、学園外での最初の任務を終えた。
大きな問題を残したままではあるが、目的を果たすことができ、俺はホッと胸を撫でおろすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます