第187話 蹴散らせ!

「はっ! こんなガキどもを相手にこの大人数は大げさ過ぎたな」


 俺たちを取り囲むリーダー格の男は吐き捨てるように言う。

 周囲の人間は――ざっと見て三十人ほど。

 こちらが六人だから、ひとり当たり五人を相手にしなければならない。


 普通なら逃げ出す戦力差だが、


「「「「「「…………」」」」」」


 俺たちのパーティーに臆している者は誰ひとりとしていない。


「やっちまえ!」


 その合図を皮切りに、武装した男たちが一斉に飛びかかってきた。

 まず最初に俺たちにたどり着くのは――左側の連中!


「アンドレイ! ジャーヴィス!」

「おうよ!」

「任せてもらおう」

 

 パワーとスピード。

 それぞれに特化したアンドレイとジャーヴィスが先陣を切る。


「おらああああああああっ!!」


 まずはアンドレイが自慢のパワーで向かってくる男たちをぶん殴る。たった一撃で、大の男がクルクル回転しながら吹っ飛んでいった。


「な、なんて野郎だ!?」

「あんなのがいるなんて聞いていないぞ!?」


 周りの男たちと比べても引けを取らない――いや、それどころか、もっとデカいんじゃないか、アンドレイは。

 ――だけど、パワーだけじゃない。


「よそ見をしていていいのかい?」


 大暴れするアンドレイのそばから、ジャーヴィスが男たちを斬り捨てていく。もちろん、動けなくするだけにダメージはとどめている。


 そうこうしているうちに、今度は逆側から敵が襲い掛かってくる。

 こっちはラウルとユーリカが立ち向かった。


「いくぞ……」


 ラウルは魔剣を引き抜く。

 途端に、禍々しい魔力が辺りに漂い始めた。


「うっ!?」

「な、なんだ、この感覚は……」


 魔剣が放つ独特の魔力にたじろぐ男たち。先ほどまでの猛獣のような気配は消え去り、その表情には恐怖と不安が張り付いていた。

 ……いや、分かるよ。

 俺もあの魔剣と初めて戦った時は終始鳥肌立ちっぱなしだったからな。

 

「はあっ!」

「ぐおっ!?」

「がはっ!?」


 怯んだ男たちをユーリカが片っ端から斬っていく。


 あっという間に、敵の戦力は半減。


「ど、どうなっていやがるんだ!?」

「バカ野郎! あんなガキどもにやられてるんじゃねぇ!」

「ダメだ! あいつらはただのガキじゃねぇ! 応援を呼べ!」

 

 こちらの戦力が想定以上だったことにようやく気づいた敵サイドはさらに人数を増やすようだ。

 ――まあ、無駄な抵抗なわけだが。


「そろそろ私たちも暴れませんか、バレット先輩」

「……そうだな」


 正面からの軍勢と増援は、俺とマデリーンで対処する。


「ティーテ先輩がパートナーじゃなくて不本意でしょうけど、よろしくお願いしますね」

「君の働きに期待させてもらうぞ、マデリーン」

「お任せを。――では、お先に!」


 駆けだしたマデリーンを援護する形で、俺は聖剣を抜き――魔力を一気に開放する。


「うわぁ……いつ見てもエグい魔力……武闘大会で当たっていたら即棄権していたかもしれませんね」


 冗談半分に言うマデリーンだが、それは謙遜だ。

 彼女も十分に強い。

 ラウルを相手にあの戦いっぷりはなかなかできないからな。


 マデリーンに続き、聖剣を手にした俺は向かってくる敵を片っ端から蹴散らしていく。



 ――数十分後。

 周囲には増援に次ぐ増援により、百人以上となった敵が地面に横たわっていた。

 一方こちらは負傷者ゼロ。

 かすり傷を負った者さえいない。

 学園騎士団による学外デビュー戦は、こうして快勝に終わったのだった。

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