第186話 出陣! 学園騎士団!

 アノム地方で起きた暴動事件に巻き込まれたティーテを救うため、王国騎士団に帯同することとなった俺たち学園騎士団。


 本来、こういった事態に学生を投入することはないのだが、今回は多くの騎士が国外へ遠征している間に起きたという事情もあり、また、その実力は聖騎士クラウスさんが保証してくれたこともあって、俺たちの参加が決まった。


 クラウスさんの推薦以外にも、学園祭での武闘大会を見ていた人たちは、俺やラウル、ジャーヴィスにマデリーンの戦いぶりを間近で見ているため、反対はしなかったという。

 唯一、俺たちに欠けているものは経験くらいだ――が、この経験というのはバカにできないファクターである。

 俺たちはそれをどうにかして補う必要があった。


 ……もっとも、学園騎士団としての参加が認められなかったとしても、俺は何かしらの手を使って潜り込んだだろうが。


 この件に関しては、騎士団が手薄になっている日をピンポイントで狙ってきているということもあり、何者かが情報を漏らしているのではないかという疑惑も立っている。


 それについては俺も思うところがあった。

 というのも、ティーテたちが向かったアノム地方――ここ、確か原作【最弱聖剣士の成り上がり】で登場していた気がしたのだ。

 時期としては、すでに俺……というか、原作版バレットが主人公ラウルによって「ざまぁ」が実行されたあと。割と最近の話だったはず。そういえば、内容も騎士団の裏切り者が情報を漏洩させ、それにより多国間での戦争が勃発する危機に陥るって感じだった。


 まさか、と嫌な予感が脳裏をよぎる。

 今回の暴動の実行犯も、その多国間での戦争を引き起こすことが目的ではないだろうか。

 もしそうだとしたら……原作とは時系列が大きく異なる。


 とはいえ、すでに俺が本来の対人関係やら評判やらを変えまくっているため、今更それくらいの誤差には驚かない。


 問題はティーテだ。

 ティーテが誘拐されるなんて展開はなかったからな。

 あの頃は……口にするのは心苦しいが、原作でのティーテはほとんど空気だった。次から次へと加わる新しいハーレム要員たちに押し負ける形で、最初期にハーレム入りしたティーテの影は薄まっていたのだ。


 原作でラウルたちがアノム地方を訪れた際も、確かティーテは他のキャラとともに別行動を取っていたはず。

 それが、このような形で巻き込まれるなんて……。




「バレット」

「! ど、どうした、ジャーヴィス」


 これまでの経緯を振り返っていると、ジャーヴィスに声をかけられた。

 いかん。

 また考え込んでしまう悪い癖が出ていた。


「まもなく騎士団との合流地点に到着するぞ」

「あ、ああ」


 俺たちは今、戦闘準備を整え、騎士団が作戦を立てるために用意した合流地点に向けて馬車を飛ばしていた。

 気持ちを引き締めなくてはと思った矢先、突如轟音とともに大きな横揺れが発生する。さらに、「ドォン!」という衝撃音が響き渡った。


「!? な、なんだ!?」


 緊急停止した馬車から飛び降りて外の様子をうかがうと、前方に巨大な落石が。

 それは明らかに人の手によって落とされたものだった。


「俺たちの行く手を遮ろうってわけか……」

「そのようだな」


 俺とジャーヴィスが並んで立っていると、そこへ他のみんなも集まってくる。

 ――さらに、この事態を引き起こした元凶と思われる人物たちも姿を見せた。


「驚いたな。本当にガキばっかりじゃねぇか」


 落石の上に立つのは、大剣を手にした金髪の男。

 その言葉を引き金にして、俺たちの周りを取り囲むようにぞろぞろと武装した男たちが姿を見せる。

 ヤツらが……暴動を起こしたって連中か。


「悪いが、ここから先へは行かせねぇぞ? どうしても通りたいなら、力ずくで通ってみるんだな」


 金髪の男がそう言うと、周りの仲間たちは大笑い。


「……あんなことを言っているが、どうする――リーダー?」


 ジャーヴィスがため息交じりに聞いてくる。

 答えは……決まっている。


「向こうがそう言うなら……力ずくで通させてもらおうか」

「ふっ、そうこなくてはね」


 俺の言葉を聞き、ジャーヴィス、ラウル、マデリーン、アンドレイ、ユーリカの四人は戦闘態勢へと移行した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る