第175話 思わぬ提案
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「言霊使いの英雄譚 ~コミュ力向上のためにマスターした言語スキルが想像以上に有能すぎる~」
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「ざまぁ」、「追放」からの逆転劇がお好きな方はぜひ!
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実家へと戻った俺は、まず両親に学園生活の経過報告を行った。
成績はもちろんだが、両親が特に気になっていたのはやはりあの学園祭での武闘大会。
ジャーヴィスとの激しい一戦は特に強く残ったらしく、父上に至っては身振り手振りでその時の様子を解説する熱の入れようだった。
それが終わると、次に両親が気になっているのは――
「エーレンヴェルク家のお嬢さんとはうまくいっているのか?」
当然、ティーテとの仲についてだ。
ただ、これに関していえば説明は不要だと思っている。
学園祭でのやりとりをしっかり見ているはずだし、俺があえて言わなくても、マリナたちが熱く語ってくれるはず。それこそ、さっきの父上並みに身振り手振りで。
とりあえず、順調にお互いのことを理解し合い、絆を深めていることを報告した。
すると、父上から意外なひと言が。
「ならば、当初の予定通り、卒業と同時に結婚式を挙げるということでいいな?」
「えぇ。――えぇっっっ!?」
け、結婚式!?
それはいくらなんでも早すぎじゃないか!?
俺は母上の意見も聞きたいと視線を向けるが、
「いいわねぇ! 卒業と同時に結婚……私たちと同じだわ」
ノリノリだった。
ていうか、父上と母上も卒業後即結婚だったのか。
……こちらの世界では、それくらいの年齢で結婚するのが当たり前なのかな。特に貴族ってことだと、跡継ぎの問題とかもあるだろうから、かえって若ければ若い方がいいって考え方なのかもしれない。
報告終了後。
俺は自室のベッドで横になると、ジッと天井を見つめる。
その間、頭上を旋回しているのは先ほどの「結婚」というワードだった。
当然、エーレンヴェルク家もティーテにそう伝えているだろう。
「ティーテは……どう思ったのかな」
不意に、そんな言葉が口をつく。
そりゃあ、婚約者なんだから、いつかは結婚するのだろうけど……あまりにもいきなりすぎて面食らっている状態だ。
そんな時、俺の頭に今度はある疑問が芽生えた。
――これは原作でも同じ流れなのだろうか。
バレットとティーテ。
原作の学園時代は婚約者同士でありながらも疎遠であり、ティーテはむしろラウルとの間で絆を深めていった。やがてそれがバレットを奈落の底へ突き落す「ざまぁ」のきっかけとなるのだが……この世界では、そういった事態が起きそうにない。
俺とティーテとの仲は良好だし、ラウルもユーリカと仲良くやっている。
……そう思うと、むしろこっちが自然な流れじゃないのかとも思えてきた。
原作でのすったもんだは全部バレットの責任。
仮に、あいつが原作の世界でも今の俺のようにしていたら、ティーテと早期に結ばれる未来があったはずだ。
――ただ、俺とティーテが結婚すると、いよいよこの世界は原作のレールから完全に逸脱することになる。
きっと、ティーテは勇者パーティーに入らないだろうし、他の面々にも多少なりとも影響が及ぶはずだ。
……まあ、悪影響ではないだろうし、俺もティーテとの結婚は望んでいる。
そのためにも……二日後に行われるパーティーで、俺はティーテの仲をもう少しだけでも進展させておきたい――いや、させなくちゃいけない。
その強い意志を胸に抱き、俺は就寝のため着替えを始めるのだった。
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