第172話 決意の夜
ティーテの実家――エーレンヴェルク家で行われる冬のパーティー。
そこで、アンドレイは一世一代の大勝負に出る。
試験が終わった日の夜。
就寝前、マリナに「今日も一日ご苦労様」と言って労をねぎらうと、俺はベッドへ仰向けとなった。
思い出すのは、原作でのジャーヴィスの扱い。
バレット(原作)に弱みを握られ、その後は彼の右腕的存在になり、絵に描いたような転落人生を歩んでいく。
――恐らく、そちらにもアンドレイはいたはずだ。
その性格からして、きっとジャーヴィスに改心するよう促しただろう。
しかし、結局はその想い届かず……ジャーヴィスは悪評高い勇者パーティーの一員として名を知られることになる。そして、覚醒したラウルに――なんだか、いたたまれない気持ちになってきた。
ジャーヴィスだけじゃない。
脅されていたとはいえ、自分の犯してきた罪を認めて監獄行くとなるジャーヴィスを、原作のアンドレイはどんな気持ちで見送ったのか……彼の性格からして、きっと自分を責め抜いたはず。
今のところ、この世界ではそのような事態にはならないと思う。
ジャーヴィスは学園祭で自分の性別を告白し、実家の悪事をすべてさらけ出した。真の意味で救われたんだ。
アンドレイの想いが成就するか、それはまだ分からない……まあ、あのふたりの様子を見る限り、まったく望み薄ってわけじゃなさそうだけど。
「あとは……」
寝返りを打ちながら、今度はテーマをガラリと変えた。
――俺とティーテの関係について、だ。
この冬を越えて春を迎えると、俺がこの世界に来てちょうど一年になる。
原作では詳細な描写がないため断言はできないが、ここまでは順調に来ている――はず。
地を這っていた原作バレットの評価は持ち直してきていると信じたい。
そんな中で、俺はある決意をしていた。
それは……ティーテとの関係を進展させること。
今でも俺たちの仲はいい。
けど、そこ止まりなんだ。
今度のパーティーでは、もう少し進んだ仲になりたい。ティーテの性格を考えると、あまり無茶なことはできないだろうが、もう一歩二歩先の関係くらいはイケると目論んでいる。
学年がひとつ上がると、実習課程が増える。
おまけに学生の能力次第では、モンスターの討伐任務にも参加することとなるのだ。
恐らく、学園騎士団のメンバーはその一員となるだろうが……そうなってくると、忙しくて今よりも自由な時間が減ってしまう。
そうなる前に、ティーテとの関係を進めなくては!
「これは……アンドレイのことばかり気にかけているわけにはいかないな」
アンドレイの応援はする。
しかし、それと同じくらい自分のことも頑張る。
これはなかなか大変だな……。
まあ、もう時間は残っていないし、ここまで来たらやるしかない。
そのために……いろいろと下準備をしておかないとな。
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