第170話 死闘! 定期試験!
【お知らせ】
本日より、がうがうモンスター様にて、本作「嫌われ勇者」のコミカライズが始まっております!
担当してくださるのはたぢまよしかづ先生です!
最悪のバッドエンドを回避するために奔走するバレットの頑張りをぜひマンガでもお楽しみください!
…………………………………………………………………………………………………
いよいよ定期試験が始まった。
アンドレイはというと、試験が始まる十分前に教室へと帰還。
直前に振り返りの学習はできなかったが、今朝のようなフラフラの状態で挑むよりも、今みたいにある程度落ち着きを取り戻してから挑んだ方が好成績を望めるはず。
元々はそんなに成績が悪い方じゃないわけだし……多少点数が落ちたとしても、補習レベルにまでならなければいいのだ。
「頑張れよ……アンドレイ」
そう呟いた直後、ウォルター先生が「はじめ!」とテスト開始を告げる。
アンドレイの運命を決める一日が始まった。
テストは全部で五教科。
これを一日でこなす。
その教科内容は、
魔法薬学。
現代魔法律。
魔法文字。
世界魔法史。
戦術プラン。
以上。
これらに実戦訓練が加え、総合的な判断のもと成績が出される。
アンドレイがもっとも苦手にしているのは世界魔法史。
これさえ乗りきってしまえば、あとは問題ないだろう。
カリカリと文字を書く音だけが響く教室。
みんながテストに集中している中、俺はカンニングを疑われないよう注意を払いながらアンドレイの様子を窺う。
「…………」
アンドレイは半ば放心状態だった。
視線は泳ぎ、口は半開き。
とてもじゃないが、テストに集中できているとは思えない――と、
「っ!」
ハッと我に返ったアンドレイはテスト用紙へと視線を向け、筆を走らせる。どうやら大丈夫のようだが……もしかして、ジャーヴィスのことでも考えていたのか? あの反応から察するに、きっと「振られたらどうしよう」って考えているのかもな。
……言いたい。
「今はテストに集中するんだ、アンドレイ!」って、叫びたい。
ただ、こうなってはもう応援するしかない。
ジャーヴィスへ想いを告げるためにも、ここは踏ん張りどころだ。
――そういう俺も、あまり人ばかりを気にしていられない。
せっかくアンドレイが死力を尽くして補習免除を勝ち取っても、協力者である俺が補習では格好がつかないからな。
ティーテ、ジャーヴィス、それからラウルにユーリカあたりは心配いらないだろう。パーティーに招待予定の友人たちも大丈夫そうだ。
「……よし」
周りに聞こえないよう、気合を入れ直す。
さて、いっちょやりますか!
◇◇◇
最後のテストが無事終了。
直後、学生たちからは一斉に「終わったぁ!」と叫び声があがった。
まだ結果は出ていないとはいえ、とりあえず肩の荷は下りたって感じかな。まあ、うちのクラスは優秀な学生が多いから、そもそも補習者なんて出ないのかもしれないけど。
「終わりましたね、バレット」
「ああ。お疲れ様、ティーテ」
「バレットの方こそ、お疲れ様でした♪」
激闘を称え合う俺とティーテ。
すると、そこへラウルとユーリカがやってくる。
「どうでしたか、バレット様!」
「やれるだけのことはやった……あとの結果は天のみぞ知るって感じかな。そっちはどうなんだ、ラウル?」
「僕も同じですね。全力は尽くしました!」
「ユーリカはどうでした?」
「私は……戦術プランのテストが不安ですぅ……」
ワイワイと話す俺たち。
……で、問題のアンドレイはというと――
「終わったな、バレット……」
妙に静かな口調でそう告げるアンドレイ。
その終わったというのはテストのことか、はたまたその内容のことか……なんだか聞くのが怖いなぁ。
さらにそこへ、
「おやおや、随分と賑やかだね」
ジャーヴィスもやってきた。
「どうだった、アンドレイ。あまり体調が優れないようだが……」
「! お、おおっ! 問題ないぜ!」
「ならよかった♪」
あからさまに動揺するアンドレイといつも通りのジャーヴィス。
……これは……テストより厄介な問題が発生していないか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます