第166話 救われたヒロイン
「マデリーン……」
ジャーヴィスの件でパニック状態に陥っていたアンドレイをなだめていると、そこへマデリーンがやってきた。
「まあ……アンドレイ先輩の様子で大体のことは察しがつきますが」
「そ、そうなのか?」
「大方、女性になったジャーヴィス先輩とどう接していいのか分からないとか、そういった類ではないかと。もしかしたら……好きになってしまったとか?」
大正解だ。
さすがに鋭いな、マデリーン。
「あ、ああ……そんなところだよ。一体どうしたものか――」
そこで俺は口をつぐむ。
マデリーンといえば、原作でもこの世界でもラウルに片想いをしていた。
原作の方ではラウルとユーリカの関係が悪化したことを受け、ハーレム要員の一角を担うことになったのだが、この世界ではふたりの関係が円満に進んでいるため、失恋をした格好になっている。
そんなマデリーンに、恋愛絡みの相談事について助言を求めるのは……その……ためらわれたのだ。
……まあ、それを抜きにしても、今は家のことでいろいろと大変だろうし。
この場は俺に任せてくれればいい。
そう言って、移動をしようとした時だった。
「武闘大会のやりとりを見る限り、まったくの脈ナシって感じじゃなさそうですよねぇ。あー……でも、ジャーヴィス先輩はどちらかというと友情って面が強いかもしれません。これはなかなか強敵ですよ」
……あれ?
本人、めちゃくちゃ乗り気じゃないか?
しかも、こっちが説明しなくても的確にアンドレイの悩みを指摘する。
これ以上ない助っ人になりそうだ。
俺が慎重に次のひと言を脳内で選んでいると、
「バレット先輩」
「! ど、どうした?」
「もしかして……私に気を遣っています?」
「うっ!?」
「図星ですか」
一瞬でバレた。
不快な思いをさせてしまったのかと焦り、よく分からない動きをしながら「あの、その」と弁解の言葉を探している俺に対し、
「本当に……変わりましたね」
マデリーンはクスクスと小さく笑いながら言った。
「私がこの学園に入学する前から、あなたの噂は耳にしていました」
「……詳細を聞くのが怖いな」
「私としても、本人を前に告げるのはちょっと……ただ、あえて言うなら、評価についてはご想像通り――いえ、もしかしたらその倍以上はあるかもしれませんね」
配慮したつもりなのだろうが、それでも十分なダメージだった。
「それはさておき、今はそこで虫の息となっているアンドレイ先輩の今後についてでしたね」
「あ、ああ……」
えらくサバサバしているけど……原作はこんなキャラじゃなかったような。
ラウルや家のことでいろいろと吹っ切れたのか?
だとしたら、ジャーヴィスだけでなく、マデリーンにとっても良い影響を与えたってことになるな。
「バレット先輩?」
「……なんでもない。そろそろアンドレイを正気に戻そうと思うんだけど――手伝ってくれないかな?」
「お安い御用ですよ♪」
明るく、朗らかな笑みを浮かべるマデリーン。
俺たちはアンドレイを励ましつつ、一週間のうちになんとかしてジャーヴィスとの間を取り持つことを約束したのだった。
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