第164話 迷い
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どちらもよろしくお願いいたします!
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ジャーヴィスがアンドレイの実家であるフォンターナ家から受けた驚くべき提案。
それは、養子縁組を結ばないかというものだった。
アビゲイル学園長は、レクルスト家が爵位を失うのは決定的と言っていた。
そうなれば、ジャーヴィスも平民ということになる。
本人的には、あまり名前にこだわりがないように思えるが、懇意にしているフォンターナ家からの誘いに迷っている様子だった。
「私がフォンターナ家に入ったら……迷惑ではないだろうかと思って」
どうやら、ジャーヴィス的にはそこが一番ネックとなっている部分らしい。
レクルスト家当主がハルマン家と共謀して行ってきたこと――ラウルやユーリカの人生を狂わせかけた所業は決して許されるものではない。
だが、それはあくまでも当主同士の行いであり、娘であるジャーヴィス自身はまったく無関係である。
彼女がどのような人間であるか……それは多くの学園関係者が理解している。
だから、ジャーヴィスの爵位が剥奪されて平民となることがほぼ決まっていても、彼女を退学とはしなかった。それだけの才能と人望があるのだ。
「私は迷惑にならないと思いますよ?」
ジャーヴィスの不安に対し、ティーテはあっさりとそれを否定した。
「だって、ジャーヴィスがどれだけ頑張っているのかはみんなが知っていることですし、きっと、フォンターナ家の人たちもそれを承知の上で養子縁組の話を持ってきたのだと私は思います」
「ティーテ……」
ニッコリと笑みを浮かべて、ティーテはジャーヴィスにそう告げた。
当然、俺もそう思う。
――が、それを口に出して伝えるのは少々憚られた。
なぜなら……俺の頭にはアンドレイの想いがあったからだ。
ジャーヴィスが女性と分かり、異性として強く意識している――というか、思いっきり恋愛感情を抱いているアンドレイ。
しかし、もしジャーヴィスがフォンターナを名乗るようになった場合、アンドレイとは兄妹という関係になる。「兄妹っぽい」ではなく、正真正銘の「兄妹」になるのだ。
この場合……婚姻関係を結ぶことはできないのか?
可能ならば、養子に入ってもまだ希望はある――が、体面を気にする貴族というポジションでは、なかなかそういった関係は認められづらいのではないか。
そう思うと、今回の養子縁組の話をプッシュすることはできなかった。
ティーテとジャーヴィスの会話に対し、「ああ」とか「うん」とか、曖昧な返事をするくらいしかできなかったのだ。
結局、ジャーヴィスはもう少し考えてみることにするとして、返事を一週間ほど先延ばしにすることで解決となった。
「この一週間、じっくりと考えるよ」
「それがいいです♪」
ふたりは笑い合っているが、こっちはそうもいかない。
まずはアンドレイに報告をしなければならないだろう。
まあ、自分の家の一大決心でもあるのだから、息子であるアンドレイにも当然話はいっているのだろうけど……。
さて、どうしたものかな。
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