第162話 ジャーヴィスの悩み事
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そしてコミカライズは5月25日から「がうがうモンスター」様にて連載開始!
どちらもよろしくお願いいたします!
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必死の説得により、コルネルの誤解をとくことができた俺たち。
危うく、彼女の中にある変な扉をこじ開けるところだったよ……。
「やれやれ、大変な目に遭ったよ」
「ふふふ。お疲れ様です、バレット」
その日の夜。
俺とティーテは学食で夕食を済ませると、談話室で今日出された課題に取り組んでいた。
学園に来てからもうずっと日課になっている勉強会。
俺にとっては幸せのひと時だ。
「お茶のお代わりをお持ちしますね」
「ありがとう、マリナ」
勉強を見守るマリナが、新しいお茶を淹れに行こうとした時だった。
コンコン、と控えめなノックの音が談話室に響く。
「うん? 誰か来たのか?」
「誰でしょう……?」
マリナが出ようとしたが、それを制止して俺が前に出る。
「誰だ?」
ノックをしたドアの向こう側にいる人物に問いかけると、
「僕だ。ジャーヴィスだ」
どうやら、来客はジャーヴィスらしい。
まだ癖で「僕」と言っているが、これはもう物心ついた時からそうするように育てられたため、なかなか抜け出せないらしい。
「どうかしたのか?」
訪問者がジャーヴィスだと分かると、俺はドアを開けて部屋の中へと招き入れた。
「あ、イスを用意しますね」
「ティ、ティーテ様、それは私が」
「大丈夫ですよ。それより、ジャーヴィスにもお茶の用意をお願いしますね」
「わ、分かりました」
慌ただしく来客を招く準備を始めたティーテとマリナ。
一方、俺はジャーヴィスの少し陰を帯びた表情から、何か悩み事の相談に来たのではないかと推測していた。
――この読みは見事的中することとなる。
「実は相談したいことがあるんだ」
席に着き、お茶を一口飲んでから、ジャーヴィスはそう切り出した。
「相談?」
「あぁ。……ある人物についてのことだ」
ある人物?
……あれ?
なんかつい最近、似たような相談をされたことがある気がする。
「アンドレイのことなんだ」
やっぱり。
ただ、アンドレイがジャーヴィスのことについて俺に相談しに来たというのは黙っておいた方がいいだろうな。あの想いは、第三者が伝えるよりも、やっぱり本人の口から直接伝えた方がいいに決まっている。
「アンドレイがどうかしたのか?」
「……彼は、この学園で最初にできた友だちなんだ」
最初にできた友だち、か。
そういえば、ジャーヴィスとまともに会話をしたのは今の学年になってからだもんな。それ以前から友人付き合いをしていたのが、アンドレイってことらしい。
「実は、彼の家とは幼い頃からの付き合いがあってね」
「レクルスト家と?」
「いや、僕個人としてさ」
アンドレイのフルネームはアンドレイ・フォンターナ。
北方の小さな領地を治める貴族の家柄だ。
なので、ジャーヴィスのレクルスト家と家族ぐるみでの親交があっても不思議じゃないと思っていたが、どうやらジャーヴィスと個人的な付き合いがあるらしい。
「同い年ではあるけど、僕はずっと彼を兄妹のように大切な存在だと思っていたんだ。……それが、最近はなんだか露骨に避けられているみたいで」
「避けられているんですか?」
ティーテは不思議がっているが……うん。俺にはその理由がよく分かる。
アンドレイ……これはかなり厄介な相手になりそうだぞ。
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