第161話 アンドレイの悩み事
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いよいよ5月8日に書籍第1巻が発売!
そしてコミカライズは5月25日から「がうがうモンスター」様にて連載開始!
どちらもよろしくお願いいたします!
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俺たちは警邏の仕事を終えると、休憩も兼ねて屋上庭園へと来ていた。
「悪いな、バレット」
「気にするなよ」
とりあえず、ベンチに腰を下ろして話を聞くことに。
「綺麗な庭園だな」
「だろ?」
ティーテたち緑化委員の努力の賜物だからな。
その庭園が、アンドレイの強張っていた心をほぐしてくれたようだ。
「ティーテ、か……随分と仲良くなったんだな」
「ま、まあな」
去年までは冷え切った関係だったからなぁ。
あまり深くつっこまれると返答に困ってしまうので、ここはこちらから話題を振ろう。
「それで、相談って何なんだ?」
「あぁ……ジャーヴィスのことなんだ」
やっぱりか。
いや、予想はしていたよ。
武闘大会が終わってから露骨に避けているようだったし。
「俺は……ジャーヴィスをずっと親友だと思っていた」
アンドレイの考えは決して的外れではないと思う。
俺たち学園騎士団の関係者以外で、ジャーヴィスがよく会話をしていたのはこのアンドレイだ。それは間違いない。ジャーヴィスも心を許している感じがするし。
その暗い表情を見るに、恐らく悩みの内容は――
『ジャーヴィスは、なぜ俺に性別のことを相談してくれなかったんだ』
って、ことだろう。
事情があるとはいえ、親友と思っていた相手が重要な秘密をひた隠しにしていた――情に厚いアンドレイにとっては少なからずショックだったのだろう。
ここはしっかりフォローをしなくてはならない。
ジャーヴィスだって、きっとアンドレイに実は女であるということを隠していたのは、とても辛かったと思う。
俺やティーテはちょっとしたハプニングで真実を知ったため、協力を申し出たわけだが……きっと、立場が違っていたとしても、アンドレイは迷わず俺たちと同じ行動を取っていただろう。
「実は……」
思考がまとまったところで、アンドレイが真実を語る。
「どう接していいのか……困っているんだ」
「アンドレイ、気持ちは分かるが、ジャーヴィスも真実を語れなかったことに――うん?」
あれ?
なんか思っていた反応が違う?
「ど、どういうことだ?」
「お、俺は……」
目をキッと細め、アンドレイは腹をくくったようだ。
「俺はあいつに対して……特別な想いを抱いている」
「えっ? と、特別な想い?」
「この気持ちはきっと……好きだってことなんだと思うんだ!」
「アンドレイ……」
「俺は――好きなんだ!」
その時だ。
ガシャン。
何かが落ちて割れたような音が響き渡る。
「「えっ?」」
俺たちが振り返ると、そこには青ざめた顔で震えているコルネルの姿があった。
「あ、あの、その」
ひどく動揺しているようだが――まさか!
「違うぞ、コルネル! 君の想像しているようなことじゃない!」
「そ、そうだ! よく分からんが、俺はバレットに抑えきれない滾る想いをぶちまけていただけだ!」
「ちょっと黙っていてくれるか!?」
「だ、だいしょうふでしゅよ。わらしくひはからいほうれふから(訳・だ、大丈夫ですよ。私口は堅い方ですから)」
「呂律が回ってない!?」
コルネルの脳に甚大なダメージが発生しているようだった。
結局、誤解をとくために時間を要し、アンドレイの悩み解決は後日改めて行うことになったのである。
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