第157話 真相は?

 大きな盛り上がりと波乱を呼んだ学園祭が終わった。

 それは一夜が明けても静まる気配を見せない。



 この日は一日片付けに当てられており、朝から学生たちが看板を下ろしたり飾りつけを外したりと大忙し。

 俺やティーテも例に漏れず、朝から片付けに精を出していた。

 

「いやぁ、今年も楽しかったねぇ♪」


 ティーテと一緒にクラスの飾りつけを外していると、満面の笑みを浮かべながらコルネルが話しかけてきた。


「はい。とっても楽しかったです♪」

「だよね~♪」


 高いテンションの勢いそのままに、ふたりはハイタッチをかわす。


「上機嫌じゃないか、コルネル」

「そりゃもう! 今年は去年以上に楽しめたしね♪」

「そうなのか?」

「えぇ。でも、それなら私よりもバレットの方なんじゃない?」

「俺?」


 満面の笑みから、ニヤニヤ顔へと変貌するコルネル。


「ティーテはコンテストで優勝するし、バレットは武闘大会で騎士団から表彰されるし、これ以上ない最高の結果だったじゃない?」

「ああ……そうだな」


 思い返せば、確かにそうだ。

 俺にとって今回の学園祭は、何もかも最高の結果になった。


 ――いい結果というなら、それだけでは終わらない。

 ひとつはラウルの呪印について。

 かつて、暴走事件を引き起こしてしまい、一時は学生たちから煙たがられていたラウル――だが、その原因である呪印を断ち切ったことで、今後は問題なく魔剣の力を頼りにできるだろう。

 それはラウルの恋人である幼馴染のユーリカにも言えた。

 さらに、レクルスト家とハルマン家がその呪印と深くかかわっている可能性が高いということで、アビゲイル学園長や騎士団関係者に尋問を受けている。


 アビゲイル学園長は、その結果を俺に教えてくれると約束した。

 恐らく、そのふたつの貴族以外にも、呪印事件に関与している者がいるはず。

 学園長はその元凶を断ちきるため、総力戦を挑むつもりでいるようだ。


「バレット?」

「――っ!? な、なんだ?」

「いや、なんだかボーっとしているようだから」

「あ、ああ、なんでもないよ」


 またまだ深く考えすぎたせいで、コルネルから疑われてしまった。 

 今回の件についてはまだまだ謎が多い。

 もう少し情報が出揃うまで、公にはしない方がいいだろう。

 それは学園長も同じ考えのようで、他の教職員や騎士たちにもかん口令が敷かれていた。


 果たして、レクルスト家とハルマン家の当主たちがどのような情報を口にするのか。

 それが気になって、また意識が深い思考の渦に呑み込まれそうだ。


 ――と、


「バレット・アルバースはいるか?」


 俺の名を呼びながら教室へ入って来たのは、うちの担任であるウォルター先生だった。


「どうかしましたか、ウォルター先生」

「おう、ここにいたか。――学園長がお呼びだぞ」 

「!」


 ついに来たか、と体が一瞬強張った。


「……ティーテ、コルネル。ちょっと行ってくるよ」

「はい」

「ここは任せておいて」


 ふたりにそう告げて、俺は学園長室を目指して歩き始めた。

 ラウルに呪印を与えた事件の真相――はやる気持ちを抑えているつもりではいたが、俺の歩くスピードはいつにも増して速くなるのだった。

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