第155話 揺るがぬ決意
「ジャーヴィス……貴様……」
怒りに打ち震えるレクルスト卿。
そんな父に対し、ジャーヴィスは毅然とした態度で立ち向かう。
「あなたが――いえ、レクルスト家がこれまでに犯してきた過ちの数々……今ここでハッキリとさせたい!」
高々と宣言するジャーヴィス。
レクルスト家の過ち。
この単語が、居合わせた他の貴族や騎士たちの興味を大いに引いた。さらにはアビゲイル学園長までもが直々にやってくる。
「随分と思い切ったことをしたな、ジャーヴィス」
「学園長! うちの愚息がとんだ無礼を!」
アビゲイル学園長が姿を見せたことで、レクルスト卿は大いに取り乱す。
気になっているのはジャーヴィスが口にした「これまでに犯してきた過ちの数々」という言葉だろう。
あの口ぶりからするに、どうやらレクルスト卿はジャーヴィスの性別隠しの他にも、何やら余罪があるようだった。しかも、当人のあの慌てぶりから察するに、この場で公にしてもらっては大変まずいものらしい。
だが……それを告発した場合、隠していた過ちの重さにもよるが、下手をするとレクルスト家は爵位を失うことになるかもしれない。
ジャーヴィスはそれを覚悟の上で、あのドレスを身にまとい、この場で公表しようというのか。
「い、一体、何がどうなっているんだ?」
「さ、さあ……」
学生たちの困惑はさらに深まっている。
だが、これだけはハッキリと理解していた。
ドレスを着たジャーヴィスは美しい。
とても男子には見えない。
いや、そもそも最初から男子じゃなかったのでは?
そんな考えが学生たちの間で巡り始めた頃――ついにジャーヴィスは思いの丈を口にする。
「今まで隠していてすまない」
そこで区切り、ひと呼吸を入れた後、
「僕は……ジャーヴィス・レクルストは――れっきとした女だぁ!」
力の限り、そう叫んだ。
それからしばらくの沈黙を経て、
「「「「「ええええええええええええええええええええええ!?!?!?」」」」」
ジャーヴィスの突然の告白は、学園中に大絶叫を招いた。
「ジャ、ジャーヴィス……」
一方、騒然となる学生とは対象的に、レクルスト卿は力なくその場にしゃがみ込んだ。どうやら、さっきの盛大な告白で、ジャーヴィスが本気だということが分かったのだろう。――これまで自分が行ってきた行為が白日のもとに晒されるということも。
恐らく、ジャーヴィスが告白に至った経緯の要因には、父親が行っていたという過ち――何かしらの不正行為も含まれているのだろう。ジャーヴィスは正義感の強いヤツだからな。その辺は、これから騎士団が目を光らせるだろう。
「ふぅ……スッキリしたな」
一世一代の告白を終えたジャーヴィスは、晴れやかな表情をしていた。
これまでたまっていたものをすべて吐き出したって感じだ。
「ジャーヴィス……ついに言っちゃいましたね……」
意外にも、ティーテは落ち着いていた。
ジャーヴィスが実は女だったという事実を知ってこそいるが、この状況でのサプライズ告白にもっと驚くと思ったが……もしかしたら、薄々感じていたのかもしれないな。
「相当な覚悟を持ってやった告白だ。これからいろいろと大変だぞ」
「はい。……でも、私はジャーヴィスのことを応援します」
「俺もだ」
ジャーヴィスが「本当のジャーヴィス・レクルスト」として生きる覚悟を決めたこの日。
友人として、俺たちはこれからも協力していくことを誓った。
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