第153話 ジャーヴィスの狙い
パトリックたちが目撃したという謎の美少女。
――だが、俺としてはもう見当がついている。
それは恐らく……ジャーヴィスだ。
武闘大会前後から、妙に気合が入っているというか、強い決心のようなものを感じていたのだが、まさか性別のカミングアウトだったとは。
……まあ、まだ目撃されたのがジャーヴィスと断定されたわけじゃない。
もしかしたら、同じ特徴を持ったまったくの別人って説もなくはないのだ。
ただ、仮に、本当にジャーヴィスが「実は女でした」とみんなに発表するとなったら、彼女の両親――レクルスト家はどう反応するんだろうか。
このようなサプライズ的な発表となると、両親には何も言っていない可能性が高い。だからと言って、あのジャーヴィスが短絡的な行動を取るとも思えない。
つまりこれは、以前からジャーヴィスの中だけで秘密裏に進行していた計画であることが窺える。
となると……これは大いにもめる結果となりそうだ。
男として家督を継がせたかったレクルスト家の思惑は丸潰れ。
それどころか、これかなり大問題だぞ。
爵位剥奪とかに発展しないか?
「バ、バレット……」
横に立つティーテが、俺の上着の袖をそっと摘まむ。
ティーテも、俺と同じ考えのようだ。
同じ貴族なんだから、そりゃそういう考えが先に来るよな。
おまけに今はハルマン家の問題でそういった事情には非常にナイーブとなっている。本当にカミングアウトするなら、ここで事を荒立てるようなマネをするより、もうちょっと穏便に済ませられそうな時期を見極めた方が――
「っ!?」
そこまで考えを巡らせていると、俺の中である仮説が生まれた。
ジャーヴィスは――あえて事を荒立てようと考えている?
もしかしたら、マデリーン絡みの騒動が持ち上がった頃から計画していた?
……いやいや、だとしても、なぜそんなことをする必要がある?
そんなことをすれば、最悪レクルスト家は――
「! それが目的なのか……?」
ジャーヴィスはレクルスト家から爵位を剥ぎ取るつもりなのかもしれない。いくら家のためとはいえ、ジャーヴィスにとっては人生そのものを奪われたようなもの。そもそも、男であり続けるのだって、俺たちの協力がなかったら実現しなかった。実際、原作ではバレットがその弱みに付け込んでジャーヴィスを――
「バレット……?」
「な、なんでもないよ、ティーテ。とりあえず、会場へ行こうか」
「は、はい」
ティーテにも動揺の色が見える。
どれだけ考えても、答えなんて出ないよな。
とにもかくにも、ジャーヴィスに会わないと。
ティーテも同じ考えのようで、俺たちの足取りは自然と速さを増していた。
やがて、後夜祭の会場にたどり着くと――そこはとても盛り上がっていた。
学園祭の成功を祝し、多くの学生や教師、その他学園関係者で溢れかえっている。
「ジャーヴィスは、まだ来ていないみたいですね」
「あ、ああ」
俺たちは自然とジャーヴィスを捜していた。
すると、会場の一部が妙にざわついているのを発見する。
「ティーテ……」
「はい。行ってみましょう」
俺はティーテの手を取り、一緒にその場へと向かう。
そこで見たのは――
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