第152話 謎の美少女、現る?
いよいよ後夜祭が開催される時間となった。
学生たちはグラウンドへと集結。
ここで、今日一日を振り返りながら、生徒会が主催するイベントが行われる。
その場に合わせて少し気合の入った衣装に着替えた俺たちは、盛り上がりを見せる学生たちを前に圧倒されていた。
「凄い賑わいですね!」
「あ、ああ」
転生前のバレットが持つ記憶の中には、後夜祭に関するものが何ひとつない。去年は学園祭に出ているはずだが……記憶がないということはこの後夜祭には出ていないのか?
そんなことを考えていると、目の前に興奮気味の男子三人が。
「見たかよ、今の女子!」
「ああ!」
「すげぇ可愛い子だったな!」
よく見ると、その三人はよく知る男子たちだった。
「パトリック? それにチャールズとカイルも」
かつてバレットの取り巻きとして、ラウルに陰湿ないじめ行為をしていた五人組のうちの三人だった。……陰湿ないじめと言ったが、それはあくまでも原作版バレットに命じられてやったことであり、彼ら自身は本来とても気のいいヤツらだ。両親がアルバース家とつながりのある商人だったりするので、彼らはバレットの言いなりになっていたのである。
まあ、それも俺が転生してからはなくなったけどな。
しかし、三人は一体何を見たんだ?
「チャールズ」
「おおっ! バレット様!」
相変わらず、パトリックたちは俺のことを「様」をつけて呼ぶ。ラウルにも言ったのだが、俺個人としては普通に呼び捨てにしてもらいたいのだが、さすがにそれはできないと拒否された。
それはさておき、
「さっき言っていた可愛い子というのは?」
「「「「えっ」」」」
三人だけでなく、ティーテまで不思議そうにこちらを見つめている。その瞳はどこか不安げなようで――
「はっ!」
さっきのセリフ……聞き手によっては最低な発言じゃないか!?
「いやいや! 違うぞ! 今の発言はそういう意味じゃ――一体どんな子なのか、ちょっと興味があっただけだ!」
なんかもう、泥沼って感じになってきたな……。
これ以上醜態をさらす前に、俺はコホンとわざとらしく咳払いをして空気を振り払う。
「俺にはティーテという素晴らしい婚約者いるから、その子を色恋の対象で見るつもりは毛頭ないが、君たちがそこまで盛り上がるほどの女子とは一体どんな子なのか、少し関心を抱いただけだ」
努めて冷静に言っているつもりだが……ちょっと無理があるかな?
「そ、そうですよね!」
「バレット様がティーテ様以外に色目を使うなんて考えられない!」
「そうだ!」
あっ。
信じてくれた。
三人を代表して、パトリックが先ほど目撃したという俺に女の子の特徴を教えてくれた。
「その女の子は長い金髪と凛々しい目元が印象的な美少女でした」
「そうそう。まとうオーラは貴族令嬢って感じ」
「でも……どこかで見たことあるんだよなぁ」
そう言って首を傾げるカイルに対し、パトリックとチャールズも「それな!」と声を揃えて同意した。
長い金髪。
凛々しい目元。
そして漂う貴族らしい雰囲気。
「……ま、まさか」
それってもしかして――あいつじゃないのか!?
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