第149話 ベストバウト
武闘大会はすべての試合を終えて、閉会式を迎えた。
この閉会式では、ベストバウト賞というのが設けられており、すべての戦いを観戦した騎士団メンバーの投票で決められる。
その結果は、
「今年のベストバウト賞は――バレット・アルバースとジャーヴィス・レクルストの試合に決定しましたぁ!」
司会進行を務めていた女子学生のハイテンションボイスが響き渡る。
同時に、会場全体から今日一番の大歓声が起きた。
「さすがです、バレット様!」
「ジャーヴィス様も!」
「おめでとうございます、ふたりとも!」
ラウル、ユーリカ、そしてティーテからも祝福の言葉が贈られた。さらに、この武闘大会に参加していた学生たちからも拍手で祝われた。
「さあ、壇上へ!」
司会役の学生に促されて、まだ実感のまったく湧いていない俺とジャーヴィスはステージへと進んでいく。
そこでは腕を組んで俺たちを待ち構えているアビゲイル学園長の姿が。
「さっきぶりだな、バレット・アルバース」
「本当ですね」
「ジャーヴィス・レクルストも、よく頑張ったな」
「光栄です、学園長」
「君たちがこの舞台に立ったこと……私は嬉しく思うぞ」
俺たちは交互に学園長と握手を交わし、記念リングを進呈された。
直後、今度は会場からまるで地鳴りのような拍手が。
「よくやったぞ、ふたりとも!」
「感動したぜ!」
「来年も期待しているぞ!」
あちこちから降り注ぐ、俺たちの健闘を称える声、声、声――原作バレットのままでは絶対に浴びることのなかった言葉の数々だ。
「…………」
自然と、俺は拳を握っていた。
全身が力んでいるって感じだ。
――思えば、俺はこうなるように頑張ってきたんだ。
神授の儀で受けたような、半ば強制された祝福ではなく、心から祝福されている。それを実感していた。この握り拳はそれを噛みしめているってことかな。自分でやっていてよく分からないっていうのもおかしな話だが。
「やれやれ……こういうのはガラじゃないんだけどな」
ふと視線を横へ移すと、そこには照れ臭そうにはにかんだ笑顔を浮かべるジャーヴィスがいた。
……彼女もまた、原作では悲惨なラストを迎える《ざまぁ》要員だった。
それが、今では喝采を浴びている。
暗く冷たい監獄ではなく、光の当たる場所で。
「…………」
「? どうかしたかい?」
「あ、いや、なんでもないよ」
とりあえず、万事無事に運んだようで何よりだ。
あとは……ハルマン家の陰謀について、か。
これから本格的な調査が行われるのだろうけど……果たして、どこまで解明することができるだろうか。
それに、学園長の言っていた「学園騎士団に協力を仰がなくてはならない時が来る」ってニュアンスの言葉も気になる。
学園長は何かを掴んでいて、あんなことを言ったのか。
それとも、何か他に狙いがあるのだろうか。
まだまだ謎は多い。
ネタバレされていない部分に隠された【最弱聖剣士の成り上がり】の物語。
果たして、その終着点はどこなのか。
……まあ、どんな結末を迎えようとも、俺がティーテを幸せにするって未来は変わらないんだけどな。
そう思いながら、大歓声に応えるよう手を振り、そのあとでティーテだけに手を振った。
それに対して嬉しそうに手を振り返してくれるティーテ。
――舞台は後夜祭へと移る。
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