第145話 ジャーヴィスの想い

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バレット、ティーテ、ラウル、ジャーヴィスの四人に加えてメイド三人衆もお披露目!?


よろしくお願いします!


…………………………………………………………………………………………………




 会場は騒然となっていた。


 俺とジャーヴィス――共に初代学園騎士団のメンバーである俺たちのぶつかり合い。

 言ってみれば、今回の武闘大会における目玉カードだ。


 だが、ここまでの戦いではジャーヴィスが圧倒的優勢に立っている。

 俺はというと、強力な一撃を食らってライフを半分近く消費してしまった。


 そういえば……ジャーヴィスもラウルと同じく、王国騎士団への入団を夢見ていたんだったな。先ほどから感じているジャーヴィスの決意――それは、騎士団への入団を夢見るものから来るのか?


 ……違う。


 確証はないが、それは少し違うと感覚的に思えた。

 いずれにせよ、決着がつけば……すべて分かる。


「はあっ!」


 俺は気合を入れ直すように叫びながら、聖剣へ魔力を込めていく。


「バレット・アルバースがようやく本気になったぞ」

「ここからだ……ここからが本番だぞ」

「何せ、あいつはあの聖剣でワイバーンすら倒したからな」


 聖剣の力を解放したことで、周りのざわめきが一気に増した。


 しかし、ジャーヴィスの闘志が失せることはない。

 すぐさま次の攻撃へと移行した。


「くらえっ!」


 次にジャーヴィスが放ったのは風魔法。

 目に見えない風の刃が襲い掛かる。


 これに対し、俺は防御魔法を展開させる。

 魔力によって生み出された半透明の壁が俺の周囲を覆い、ジャーヴィスの放った風魔法を跳ね返す。


「やるね。――なら、そのシールドごと吹き飛ばす!」


 再びジャーヴィスが攻勢に出る。

 今度は魔法属性を水に変え、剣を振るう。

 ジャーヴィスの魔力によって姿を現した大量の水は、やがてひとつに集まって俺へと放たれた。防御魔法の展開を解く前――つまり、その前の風魔法での攻撃をしている時から、ジャーヴィスはすでにこの攻撃の準備を行っていたのである。


 そのうち、水の圧に耐えられなくなってきたシールドから「ピシッ! ピシッ!」とヒビが入る音が聞こえてくる。


 このままではまずい。


「……仕方がない。アレを使うか」


 最近覚えた、とある魔法の応用。

 秘密兵器にしておきたかったのだが、そうも言っていられない状況だ。防御魔法と同じ無属性だし、ジャーヴィスも気づかないだろう。


 俺は目を閉じ、意識を集中させる。

 そして――


「っ!」


 タイミングを見計らって発動せる。

 それと同時に、シールド魔法は解除された。


 そう。

 俺が今行ったのはいわゆる転移魔法。

 だが、極端に距離の短い転移――見ようによっては、俺が瞬間移動しているように見えるだろう。


「な、なんだ!?」

「バレット・アルバースが一瞬にして別の場所に移動したぞ!?」

「どうなっているんだ!?」


 観客からは戸惑いの声があがる。

 まあ、本来の転移魔法って、長距離をあっという間に移動するためのものだから、今みたいに短い距離を移動する手段としては用いられない。それに、実は長い距離を転移するより、極端に近い距離を転移する方が難しかったりするのだ。


「さすがだね、バレット。こんな形で抜け出されるとは思ってもみなかったよ」


 呆れたような笑い声を漏らしながら、ジャーヴィスは言う。


「もう手詰まりか?」

「まさか。本番はこれからさ」


 俺たちは互いに構え直す。


「す、すげぇ!」

「こんな戦い、滅多にお目にかかれないぞ!」

「生で見ることができてよかった~」


 観客たちは俺たちの戦いぶりに熱狂していた。

 ――が、それは対照的に、俺もジャーヴィスも至って冷静だった。


 恐らく、あっちも分かっているだろう。



 この戦い――決着は一瞬でつく。

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