第143話 激闘の果て
マデリーンが仕掛けた一世一代の大逆転カウンター。
歴戦の勇士である騎士団関係者の誰もがラウルの勝利を確信している中で、それをひっくり返す一撃――と、なるはずだった。
「ふんっ!」
ラウルは、そのカウンターを寸でのところで回避する。
偶然じゃない。
事前にすべて読み切ったうえで、ギリギリのタイミングを見計らい回避したのだ。
「なっ!?」
完全に決まったと思ったタイミングで避けられた。
焦ったマデリーンは大きくバランスを崩し、それは絶好の機会となる。
「うおおおおおおおっ!!!!!!」
その隙を、ラウルは見逃さない。
魔剣の力を全開放した渾身の一撃をマデリーンへ叩き込んだ。
直後、彼女の細身の体が宙を舞った。
ダメージが無効化されていなければ……そう思いたくなくなるほど、完璧すぎるラウルのカウンターだった。
マデリーンのライフは一気にゼロとなり、この瞬間、ラウルの逆転勝利が確定した。
「「「「「うおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」」」
ラウルの逆転勝ちに会場は大盛り上がりとなる。
ほんの一瞬のうちに起きた逆転に次ぐ逆転――見ている側としては、本当に何が起きるか分からない、ハラハラドキドキした展開となったのだから無理もない。
「勝者! ラウル・ローレンツ!」
高らかに勝利宣言をされ、一層強さを増した観客の声援に、ラウルははにかんだ笑顔を浮かべながら手を振ってそれに応える。
「……よかったな、ラウル」
原作におけるラウルの学園生活は、あまり幸福なものではなかった。
聖騎士クラウスさんやティーテとの出会いはあるものの、大悪党(原作)バレットと、そのバレットに付き従う(原作)ジャーヴィスに陰湿な嫌がらせを受け続けていた。
周りだってそうだ。
魔剣に選ばれたラウルを助けようとする者はいなかった。
それがどうだ。
今のラウルはまるで違う。
そこには、かつて魔剣を授かり、学園中から蔑まれていたラウルだが、こうして大歓声を受けるまでになった。
……なんだろう。
自分は一切関係ないはずなのに、胸からアツいものが込み上げてくる。
原作を知るファン目線ってヤツなのかな。
一方、すぐに意識を取り戻したマデリーンだったが、自らのライフがゼロになっていることを知ると、敗北を悟ってその場にへたり込む。
「そっか……私は負けたのね」
小声でそう漏らすが、表情はどこか晴れやかに見えた。
すべてを出しきったうえでの敗北……マデリーンからすれば、完敗だものな。かえってスッキリする結果だったのかもしれない。
――いや、マデリーンにとって、ただの完敗ではない。
「おめでとう、ラウル!」
「ユーリカ!」
勝利を喜び、抱き合うユーリカとラウル。
そして、それを見つめるマデリーン。
もしかしたら……マデリーンの中で、ラウルに対する気持ちに踏ん切りがついたのかもしれないな。
「……さて、次はいよいよ僕たちの番だね」
ホッと安堵している俺の背後から声をかけられた。
「ジャーヴィス……」
「前にも言ったが、手加減無用で頼むよ」
「ああ、もちろんだ」
俺とジャーヴィスは固い握手を交わす。
そして、
「続きまして第四試合! 光属性科二年・バレットVS光属性科二年・ジャーヴィス!」
会場に俺たちの名前が響き渡ったのだった。
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