第142話 反撃開始!

 マデリーンの猛攻を耐え抜き、反撃体勢を整えたラウル。


「さあ! これまでの分をお返ししてやりなさい!」

「おう!」

 

 恋人であり、サポート役のユーリカから声援を受けたラウルは、魔剣に魔力を込める。

 これで形勢は完全に逆転。

 魔剣の力を存分に発揮できる状態となったラウルが相手となったら、この学園でも勝てる人間は限られてくる。


「見事に状況をひっくり返しましたね」

「ああ。さすがだな、ラウル」


 ユーリカだけでなく、ティーテやジャーヴィスもラウルの勝利を疑わない。

 俺としても、こうなってしまってはマデリーンに逆転の芽はないと思わざるを得ない――のだが、どうにも嫌な予感がする。


 俺は不安の正体を探るため、対戦相手のマデリーンへと視線を移す。

 最初の猛攻の影響で、息が上がっている。

 浮かべている苦しそうな表情が、劣勢であることを証明していた。


 ……気づけ、ラウル。


 本当なら、大声で注意を促したいところだが、ルール上、それをやった途端、ラウルの反則負けとなってしまう。騎士団へ実力をアピールするどころか、大きなマイナス点にさえなりかねない行為だ。


 なので、サポート役のユーリカに気づいてもらいたいのだが……


「いっけぇ!」


 勝利を確信しており、周りがよく見えていない状態だ。

 ……まあ、俺の心配が杞憂で終わる可能性だってあるわけだし――いや、むしろ今の状況ではそう考えるのが当たり前だろう。


 しかし、なんだ……この筆舌に尽くし難い、悪寒にも似た感覚は。

 俺の気持ちをよそに、ラウルは先ほどの猛攻のお返しだと言わんばかりに勢いよくマデリーンへ突っ込んでいく。


 ――その時、俯いていて見えづらかったが、マデリーンの口角がわずかに上がっているのが見えた。


 笑っている?

 やっぱり罠か!


 ダラン、と垂れ下がり、力感のなかったマデリーンの腕に強さが戻る。ギュッと握り直された剣を、ラウルの攻撃に合わせて繰り出した。


 カウンター狙い!?


 マデリーンは最初からこれを狙っていたのだ。

 スピード重視の連撃でラウルに微量ながらダメージを蓄積させ、疲れたと思わせて向こうが攻撃に転じた際、強烈なカウンターで一気にライフを削る。


 これが、マデリーン・ハルマンの描いた青写真。


 ラウルはまんまとそれに乗せられた。

 一発逆転を狙っているためか、その攻撃は大振りでカウンターを合わせるには持って来いの攻撃だ。


「――うん?」


 そこで、俺はまた違和感を覚える。

 原因はラウルの動作。

 あまりにも大きすぎる。


 確かに、今はチャンスだ。

 マデリーンがわざと生み出しているとはいえ、ラウルからすれば一発逆転を狙える最高においしいシチュエーション――しかし、そういう時こそ冷静に立ち回れるのがラウル・ローレンツという男だ。


 あんな見え透いた攻撃を仕掛けるものだろうか。


「――っ!? まさか、ラウルのヤツ!?」


 すべてお見通しだったのか!?

 最初から今に至るまで――偽装猛攻を仕掛け、そこからカウンターを狙っていくというマデリーンの戦力を最初から読み切っていた。

 今の行動も、マデリーンの誘いにまんまと引っかかったと見せかけて、逆にそのカウンターを利用したカウンター狙いじゃないのか?


「はあっ!」


 俺の考えがまとまらないうちに、マデリーンが仕掛けた。

 特別席に座る騎士団関係者も驚くまさかのカウンター。


 これに対し、ラウルが取った行動は――

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