第140話 乱入者、あり!
ざわざわざわ――
突然の声に、会場は騒然となる。
だが、騒がしくなっているのは声を上げた女の子の存在そのものにあった。
「お、おい!」
「こりゃどうなってんだ!?」
あちこちからそんな声が漏れ聞こえる。
「えっ!? えぇ!?」
「ど、どういうことだ!?」
「何がどうなっているの!?」
ティーテ、ジャーヴィス、ユーリカの三人も驚いていた。
俺だって驚くところだが……内心、最終的にはこうなるんじゃないかって思っていた。
「どうやら……ギリギリ間に合ったみたいだな」
ボソッと呟いた俺の視線先には――マデリーン・ハルマンがいた。
双子の弟の女装ではなく、本物のマデリーンだ。
「あ、あぁ……」
ステージに立ち、ラウルと対峙している弟ジョエルはその場にペタンとへたり込む。
すると、どこからともなく騎士たちがやってきて、彼に肩を貸し、どこかへと連行していった。
一体何が起きているのか、すぐには理解できなかったが……騎士たちに囲まれているアビゲイル学園長を見た時、なんとなく察した。
あの人が本物のマデリーンを捜しだしたのだ、と。
そして連れていかれる弟ジョエル……彼が何かしらの形でかかわっているというのも騎士たちの対応でなんとなく理解できた。
未だ混乱が続く中、学園長は何やら観戦に来ていた騎士たちへ話をすると、
「静粛に!!!!」
凄まじい大声で会場を黙らせる。
あれも魔法なのか?
とても人間の喉が出せるボリュームじゃなかったぞ。
「少々手違いがあったようなので、第三回戦は仕切り直しよ! 改めて、ラウル・ローレンツ対マデリーン・ハルマンの試合を始めるわ!」
学園長が高らかに言い終えると、押さえつけられていた観客たちの感情が一気に爆発。
当のラウルはまだ混乱しているようだったが、
「ラウル先輩……正々堂々と戦いましょう」
ステージに上がったマデリーン(本物)がそう言って握手を求めると、
「――ああっ! よろしく頼むよ!」
それに笑顔で応えるラウル。
これで、迷いは吹っ切れたみたいだな。
直後、試合開始の鐘が鳴らされる。
いよいよ始まったラウルとマデリーンの対決……どういった勝負になるのかとても興味深いのだけど、ジョエルのことも同じくらい気になる。一体、彼は何をしたんだ?
「慌てなくてもいいわ」
どちらに集中すべきかソワソワしていると、いきなり背後から声をかけられた。
アビゲイル学園長だ。
「が、学園長!?」
「今はお友だちをしっかり応援してあげなさい。その後で、事情を説明するから」
肩を優しく叩かれ、ラウルの応援に専念するよう伝えられる。
その後、立ち去ろうとした学園長だったが、
「ラウルは随分と落ち着いているようだけど……何かあった?」
そう尋ねてきた。
恐らく、俺が断ち切った呪印のことだろう。
そのことを告げようとした時、突然歓声のボリュームが跳ね上がった。
それに反応してステージを見ると、ラウルが膝をついて苦しんでいる。
「ラウル!?」
どうやらマデリーンの魔法攻撃を食らったらしい。
光属性科であるマデリーンは俺と同じくさまざまな属性の魔法を扱える器用なタイプ。ラウルの服の端がわずかに焦げていることから、攻撃に使用したのは炎属性の魔法か。
「ラウル! しっかり気張りなさい! スピードも技術もあなたの方が上なんだから!」
「あ、ああ!」
パートナー役を務めるユーリカの言う通り、基本ステータスではラウルが上回っているのだろうが……マデリーンからは強い執念のようなものを感じる。
「…………」
決意をにじませた瞳は、真っ直ぐにラウルを射抜く。
まずい。
マデリーン・ハルマン……本物の方は、思っていた以上に一筋縄でいく相手じゃなさそうだぞ。
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