第133話 武闘大会への決意
ドレス品評会の結果はティーテの優勝に終わった。
着替えをし、生徒会広報部の取材を受けた後、俺はようやく自由の身となったティーテと一緒に学園を見て回ることに。
俺たちがまず向かったのは学園の中庭。
ここでは、学生たちが運営するさまざまな屋台があちこちに点在していた。
「この学園にあんな可愛い子がいたなんて……」
「お、俺、後夜祭に誘ってみようかな」
「バカ! あの子はバレット・アルバースの婚約者だぞ!」
「マ、マジかよ!」
噂はあっという間に学園中に拡散し、すれ違う学生たちがこちらを振り向く。そして、ティーテの可愛さに目を奪われるも、横でにらみを利かせる俺に気づいて視線をササッとそらしていった。
「さ、最近はおとなしくなったって噂だったが、やっぱりおっかねぇな」
「でも、去年ほど尖った感じはないな」
「むしろさっきの睨みだって、他の男どもから婚約者を守るための行為なわけだし」
……俺の評価も、少しずつ改善がみられるな。
俺とティーテは小さなオープンカフェに立ち寄った。
「緊張していたせいか、喉が渇いちゃいました」
「ははは、俺もこの後に試合が控えているからなぁ……ちょっと緊張しているよ。おまけに相手はジャーヴィスだし」
「確かにジャーヴィスはとても強いです。……でも、聖剣を持ったバレットの方に分があるのでは?」
聖剣に選ばれた勇者。
バレットは聖剣を手に入れて以降、特別視がより露骨になった。元々、名家の出ということで、幼い頃から周りの大人たちに特別扱いをされていてが……その体に宿るポテンシャルは本物だ。
その辺は原作でも言及されている。
それは第二章の終盤。
ラウルが、ティーテを奪い返そうとするバレットを返り討ちにし、その実力差に絶望したバレットが、力なく貧民街へと歩んでいく背中を眺めながらこう言っているのだ。
『バレット・アルバース……もっと真摯に剣術へ取り組んでいたら……』
ラウルの目から見ても、バレットには才覚があったのだ。
――俺自身も、バレットの持つ凄まじい素質に驚いている。それに加えて原作の流れを知っている――だからこそ、基礎基本の動きをキッチリとマスターし、聖剣だけの力に頼らず、きちんと剣術の修業も重ねてきた。
今回の武闘大会……大きな特徴は模造剣の使用ではなく、神授の儀で得た武器も使用できるということ。だから、授業での演習の時とは違い、俺は最初から聖剣の力を存分に発揮して挑めるのだ。
その俺と戦うのがジャーヴィス。
下馬評では、俺の方に分があると見る者が多いようだ。
……だが、俺は波乱が起きるかもしれないと危惧している。
前に――俺との対戦が決まった直後のあのおジャーヴィスの表情がずっと気になっていた。
あれから何度もジャーヴィスと接したが、今までと特に変わった様子はない――が、何か内に秘めた、覚悟のようなものは感じ取っていた。
同じ学園騎士団のメンバーとして、これまで幾度となく戦闘を共にしてきたジャーヴィスが聖剣の力を知らないわけがない。それでも、きっとジャーヴィスは何も臆することなく立ち向かってくるだろう。
……でも、俺だって――
「? バレット?」
「……なんでもないよ、ティーテ」
そう易々と負けるわけにはいかない。
ティーテのためにも、な。
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