第132話 結果発表
ドレス品評会は無事終了。
マデリーンの件があったから、ティーテの新しいドレス姿を愛でつつ、周囲への警戒も怠らない――が、怪しい人物の影さえ見当たらなかった。
終了後に待っていたのは投票タイム。
「えっ? ひとり一票なの? ティーテに千票入れようと思ったのだけれど」
今ひとつルールを把握していないリリア様を説得しつつ、俺は当然、ティーテに一票を投じる。それから、ちゃっかり投票用紙を受け取っていたティーテの姉(仮)であるマリナ、プリーム、レベッカの三人も投票していた。
他の参加者からも投票用紙が回収され、すぐさま集計が行われる。
そして、いよいよ結果発表の時が来た。
「それではまずは三位から!」
司会役の学生がテンション高めに発表をする。
「第三位は――コルネル・アルディーン!」
名前が呼ばれた瞬間、会場はワッと沸き上がった。当のコルネルは「まさか自分が選ばれるなんて」と放心状態だったが、周りから祝福されてようやく実感が出たのか、思わず涙ぐんでしまう。
「続いて第二位は――クライネ・フォズロード!」
再び盛り上がる会場。
中でも、メリアは号泣しながら拍手の嵐を贈っている。
「わ、私が二位……?」
こちらもまた「信じられない」といった感じに呆然としていた。
こういったイベントには不慣れな分、リアクションも取りづらいのだろう。しかし、メリアをはじめとするクラスメイトたちから祝福されると、ハニカミながら「あ、ありがとう」とぶっきらぼうに礼を言っていた。
さて、ここまでティーテの名前はまだ呼ばれていない。
――俺とリリア様は確信した。
「バレット」
「はい」
「花束の用意をしておきましょうか」
だいぶ気は早いが……まあ、無駄にはならないだろう。
「注目の第一位は――ティーテ・エーレンヴェルク!」
ほらね。
「バレット! やりました!」
「さすがだ、ティーテ!」
駆け寄るティーテを、俺は思いっきり抱きあげた。
その場のテンションというか、勢いというか……周りの目なんて一切気にせず、ティーテを抱きしめる。
「おおっと! これには婚約者のバレット・アルバースも大興奮! 母親の前でアツい抱擁を交わしているぅ!」
実況中継みたいなテンションとなった司会役の言葉で俺はテンションに任せてとんでもないことをしてしまったとティーテを放す。
俺の突然の行動にティーテは驚いていたが、周囲の視線を独占していることに気づくと顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「本日の後夜祭にて、武闘大会の優勝者と一緒に学園長から表彰されますので、ティーテさんは覚えていてくださいね!」
司会者はそう言って、ドレス品評会を締めくくった。
「武闘大会の優勝者と……」
これは是非とも優勝しなくてはならない。
ちなみに、武闘大会はトーナメント形式というわけでなく、審査員として選ばれた騎士団の関係者が、戦っている学生の姿を見てスピードや技術などにポイントを入れる。そのポイントがもっとも高い学生を優勝者として表彰するのだ。
「うし!」
ティーテが頑張ったんだ。
次は俺が頑張る番だ。
「午後からはいよいよバレットの武闘大会ですね!」
「ああ。ティーテと一緒に後夜祭で表彰されるよう、絶対に優勝してみせるよ」
ただ、そのためにはジャーヴィスと戦い、勝たなくてはならない。
それも高ポイントを獲得して。
「……できるかな」
いかん。
ちょっと弱気になってきたぞ……。
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