第124話 真実
マデリーン・ハルマンは男の娘でした。
……いやいやいやいや!
さすがにそれはないって!
とりあえず、落ち着いて話をしようと持ちかけ、場所を変えることに。
その際、会場の様子をチラ見し、ティーテとレイナ姉さんのおしゃべりはまだ終わりそうにないことを確認。さらに、そこへジャーヴィスやクライネ&メリアも加わり、さらに長引きそうな感じだ。
と、いうわけで、講堂内にある一室へ移動。
施錠を確認してから、話し合い始まった。
「まず聞きたいのだけど……今までずっと女装して学園に?」
「ち、違います!」
「そうです。これはジョエル様の個人的な趣味です」
「エレノアが無理やり着せたんでしょ!」
「私はジョエル様の深層心理を代弁したまでで――」
「マデリーン姉さんの身代わりになるとは言ったけど、女装して前夜祭に出るなんて聞いてなかっただけだよ!」
「ですが、悪い気はしなかったのでは? 大衆の前に女性の格好で現れることに少なからず快感を覚えたのでは?」
「そ、それは――って、そんなこと思うわけないよ!」
いや、ちょっと危なかった気が……そ、それより、さっきの発言で気になる点がいくつか出てきたな。
「? ジョエル? 姉さん?」
女装癖はさておき、このふたつは見逃せないワードだ。
「どういうことだ? 君はマデリーンではないのか?」
「「…………」」
ふたりは顔を見合わせると、あきらめたように一度大きく息を吐いてから、真実を語ってくれた。
「あなたの言う通り、僕はマデリーン・ハルマンではありません。双子の弟のジョエル・ハルマンです」
「!? 双子!?」
なるほど……そういうことか。
「双子の弟が、どうしてわざわざ女装までして前夜祭に? というか、本物のマデリーン・ハルマンはどうしたんだ?」
「そ、それは……」
口ごもり、何も言えなくなってしまった。
そこで、代わりにメイドのエレノアが説明役に回る。
「マデリーン様は現在家出中なのです」
「い、家出!?」
いきなり不穏な展開になったな。
「実は、マデリーン様は数日前から少し思い悩むことが多くなり……ずっとふさぎ込んでいたのです」
思い悩むこと……か。
名家に生まれたことへの苦悩ってヤツかな。
「しかし、行方知れずになったとはいえ、この学園郷の外に無許可で出るのは非常に困難……私はまだこの学園郷のどこかにマデリーン様がいると思っています」
それについては同感だ。
……ただ、
「だけど、そこからどうしてジョエルの女装に結びつくんだ?」
そこなのだ。
俺からの指摘を受けて、エレノアさんが再び口を開く。
「一年生にして武闘大会の参加者に選ばれるというのは大変名誉なことです。それを、一時の感情で棒に振っては、後々のマデリーン様の人生に大きな影を落とすことになります」
「……前夜祭は、武闘大会に参加する者たちの顔合わせの場でもあるからなぁ……それで、双子の弟に女装までさせて前夜祭に参加させたのか」
「はい。カツラや下着は私がチョイスしました」
「凄い気合だ――うん? 下着?」
「わあああああああああっ!」
俺の思考をかき消すように、ジョエルが叫ぶ。
……これ以上の詮索はやめておこう。
まあ、それはそれとして、
「ジョエル」
「な、なんですか、バレット先輩」
「どうして男子トイレに入ったんだ?」
「……えっ?」
「いや、そこまで完璧な女装なら、女子トイレに入ってもバレないんじゃないかと。あっちは個室なわけだし。心配なら、エレノアさんに見張りをしてもらえばいいわけで――」
「…………」
あっ。
ジョエルの表情が一気に曇った。
これは触れてはならない禁断の質問――と思ったが、ジョエルは少し間を開けてから真相を語る。
「――じゃないですか」
「えっ?」
「この格好で女子トイレに入ったら、それこそもう後戻りができないド変態になるじゃないですか!!」
「えぇ……」
今さら感が強い気もするが……。
すると、そこへ、
「ジョエル様」
エレノアさんが一歩前に出る。
ここは専属メイドらしく、フォローをするのかな?
「先ほどの発言から考察するに……今はまだ後戻りができるド変態と認識してらっしゃるということでよろしいですか?」
「「!?」」
まさか、トドメを刺しに来るとは……。
この後、泣き崩れるジョエルをフォローをしながら、家出娘の捜索を始めるというエレノアさんに、俺は手伝いを申し出た。
……なんだか、嫌な予感がするんだよなぁ。
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