第119話 対戦表

小説ページにも書きましたが、改めて書籍情報を!


発売日   5月8日

レーベル  ツギクルブックス様

イラスト  とよた瑣織 先生


となっております!

さらに、双葉社様でコミカライズも決定!


よろしくお願いいたします!

では、本編どうぞ!


…………………………………………………………………………………………………







 学園祭前日。


 本日の朝の鍛錬には、ティーテが付き合ってくれた。

 肉体的な鍛錬はプリームにしごかれたので、今日は聖剣を使った魔力の鍛錬を行う。


「はあぁ……」


 精神を集中し、聖剣へ魔力をまとわせる。

 そこから火、水、地、雷――ひと通り属性を変えて


 この日は授業がなく、丸一日準備の時間となる。

 さらに、夜は前夜祭が行われる予定だ。


「楽しみですね、前夜祭♪」

「ああ」


 その日、ティーテは朝からご機嫌だった。 

 理由は一緒に前夜祭へ参加するからである。

 もちろん、俺だってティーテと一緒に参加する前夜祭は楽しみだ。確か、立食パーティーみたいな形式なんだよな。


 このあとの展開が楽しみすぎて、鍛錬にも思わず熱が入る。


「ふん!」


 聖剣へ魔力を込めると、ピクッとティーテが反応した。


「あれ……? バレット」

「うん? どうした?」

 

 何かを感じ取ったのか、芝生に腰を下ろしていたティーテが立ち上がって俺の名前を呼ぶ。


「以前と魔力の質が変化しているみたいです」

「魔力の質?」


 あまりピンとこない言葉だ。


「以前の魔力とは少し違うようです……感覚的な話なので、具体性はないんですけど……」


 それもまたティーテの能力であった。

 とはいえ、その変化というのも微妙な違いらしく、特に影響が出るわけではないようだ。


 ……しかし、気になるな。

 魔力の質の変化――これは原作では一切触れられていない。

 もしかしたら……未来へのフラグ立て?


「あ、あの、バレット?」


 俺が険しい表情をしていたことが気になったらしく、心配そうな顔で俺を見るティーテ。


「ごめんなさい……私が余計なことを言ったから……」


 どうやらさっきの発言が原因だと思っているらしい。

 ……まあ、原因と言えば原因なんだが、それほどたいしたことじゃないだろう。それよりもティーテの表情が曇っているという現状はいただけない。


「なんでもないよ、ティーテ。考え込んでしまう、いつもの俺の悪い癖だ」


 ポンとティーテの肩を優しく叩いて、なんでもないとアピール。

 それからすぐに話題を変えようと、武闘大会のことについて話す。


「そういえば、今日の午前中に対戦相手が発表になるんだったな」

「誰が相手でも、バレットなら勝てますよ!」


 フンス、と鼻を鳴らして得意顔のティーテ。

 パートナーとして一緒に出場する予定なんだが……負けるわけにはいかないし、そもそもティーテが一緒なら負ける気がしない。


「よし! なら、朝食のあとで一緒に対戦表を見に行くか!」

「はい!」


 対戦相手か。

 ジャーヴィスとラウル以外なら誰でもいいか。

 まあ、あのふたりと当たっても、それそれで楽しみでもあるな。


  ◇◇◇


 朝食後。

 

 俺とティーテは学生寮の前にある掲示板に張り出された対戦表を見に行く。

 そこにはすでに大勢の学生が詰めかけていた。


 いつも使う掲示板の横に、専用の巨大掲示板が設置され、そこに対戦表が貼られていた。

 それによると、俺の対戦相手は――


《バレット・アルバースVSジャーヴィス・レクルスト》


「バ、バレット……」

「ああ。まさか相手がジャーヴィスとは……」

「そのようだね」

 

 ティーテと並んで掲示板を眺めていると、いつの間にかジャーヴィスがすぐ近くに立っていた。


「手加減はなしで頼むよ、バレット」

「当然だ。真剣勝負をさせてもらうよ」


 これは楽しみになってきたな。

 って、そうだ。


「そういえば、ラウルの対戦相手は――」


 同じ勇者パーティーのラウルは誰と戦うのか気になって対戦表へ視線を移すと、


「おっ、あった――っ!?」


 そこにあった組み合わせに、俺は言葉を失った。


《ラウル・ローレンツVSマデリーン・ハルマン》


「あっ、ラウルはマデリーンちゃんと戦うみたいですね」

「あのハルマン家の御令嬢か。確か今年入学したばかりだったね」

「えぇ。この武闘大会に一年生が出るって珍しいんじゃないですか?」

「去年は誰もいなかったし、相当レアなケースだと思うよ」

「しかも女子ですしね」


 楽しげに会話するティーテとジャーヴィス。

 その横で、俺は波乱を予感していた。



 なぜなら、このマデリーン・ハルマンという女子は――原作におけるヒロインのひとりだからだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る