第113話 嫌われ勇者、仲間と共にワイバーン討伐に挑む
「これでパーティー揃い踏みってわけか……」
騒ぎを聞きつけて、ラウル、ジャーヴィス、ユーリカの三人が駆けつけた。
「敵はだいぶ弱っているようだね。トドメを刺そうか、バレット」
「ああっ!」
「よし! 行こう!」
ジャーヴィスとラウルが剣を構える。
臨戦態勢のふたりだが、意外にも先に仕掛けたのはその背後に立つユーリカであった。
「好き勝手暴れて……覚悟しなさい!」
怒りのこもった炎魔法。
さっき俺が浴びせた風魔法でボロボロになった体へあれはキツイだろうな。
「ギャオオオオォォオ!」
苦悶にあえぐワイバーンは浮力を失い、地面に落下。鋭い爪を立ててなんとか踏ん張っているものの、そこへジャーヴィスとラウルが突っ込んでいく。
「はあっ!!」
息の合った連携攻撃で、ワイバーンの翼を両断。
魔剣使いのラウルはともかく、ジャーヴィスも凄いな。どんな武器も器用に使いこなすジャーヴィスだが、中でも剣術と弓術は目を見張るものがある。
と、心の中で解説を繰り広げていたら、ラウルとジャーヴィスがこちらへ視線を送っていることに気づく。
どうやら、トドメ役を譲ってくれたらしいな。
「それじゃあ――遠慮なく!」
俺はワイバーンの頭部目がけて跳躍。
聖剣の影響により身体能力の向上していることもあり、ワイバーンの目線にバッチリ合うくらい高く飛びあがる。そのまま、淡い光に包まれた聖剣を横へ振った。すると、聖剣を包む光がグンと伸び、そのままワイバーンの首を切断する。
「な、なんてこった……学生たちだけでワイバーンをあっさり倒してしまうとは……」
着地して、剣についたワイバーンの血を振り払っていると、呆然としているアベルさんの呟く声が聞こえた。さらに、ティーテや仲間たちも集まって来た。
「さすがです、バレット!」
「いや、みんなのサポートがあったからだよ」
「チームの勝利というヤツですね」
「そういうことだ。ラウル、さっきの一撃は申し分なかった」
「ありがとう、ジャーヴィス。そういう君だって凄かったよ」
お互いを称え合い、勝利の喜びを分かち合う。
原作【最弱聖剣士の成り上がり】とはまるで違うパーティーの雰囲気。
でも、これが、これこそが、望ましい俺たちの関係なんだと思う。
冷遇されるラウルはいない。
脅されているジャーヴィスはいない。
憎しみに呑まれたユーリカはいない。
そして――悲しむティーテはいない。
「……ひとつの形にはなったかな」
「はい! みんなパーティーとしてとてもいい戦い方だったと思います!」
ティーテは満面の笑みを浮かべて俺にそう言った。
真意としては、原作に比べてってことなんだけど……そうか。こっちのティーテにとっては今が原作なんだ。
そこへ、
「凄かったな、おまえら!」
「我ら騎士団も形無しだな」
「今の学園は一体どんな教育をしているんだ?」
半ば呆れているようだ。
それからしばらくしてレイナ姉さんも到着。
事情を説明すると、
「……まったく、末恐ろしい者たちだ」
苦笑いを浮かべながらそう言うのだった。
しばらくすると、残っていたアベルさんの部下たちが全員集結。
見ると、町の消火活動は落ち着いたらしい。
アベルさんの部隊に水系魔法使いがいたのは不幸中の幸いだったな。
さらに、一報を受けた騎士団の応援部隊が到着し、ワイバーンの亡骸の処理に当たった。
その後、俺たちは町の人々から次々と感謝の言葉を贈られた。
また、懸命な救助活動で死者をひとりも出さなかった騎士団の働きにも感謝していた。
町人たちは当初騎士団の応援部隊が駆けつけてワイバーンを倒したと思っていたらしいが、実際は俺たちみたいな学生が倒したという事実を知ると大いに驚いていた。
それから、感謝の言葉を贈る会は町をあげての祝勝会に発展。
俺たち五人も存分に楽しませてもらい、忘れられない賑やかな夜となったのだった。
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