第105話 嫌われ勇者、姉からの提案に戸惑う

【お知らせ】

カクヨムコン6への参加作品として、新作を投稿しました!


「絶対無敵の解錠士アンロッカー ~ダンジョンに捨てられたFランクパーティーの少年はスキルの真価を知るSランクパーティーにスカウトされる~」


https://kakuyomu.jp/works/1177354055151436608


《ざまぁ》+《主人公最強》な作品です!


応援よろしくお願いいたします!<(_ _)>



…………………………………………………………………………………………………







 アビゲイル学園長の呼びかけで結成された学園騎士団。

 その初陣は「特に何もなし」という平和この上ない結果で幕を閉じた。


 肩透かしといえばそうなのだが、何もないってことはそれだけ他の学生が穏やかに学園生活をエンジョイできているという事実につながる。そう思えば、俺たちの活動だって決して無駄骨というわけではない。


 帰り道。

 俺たちとティーテが一緒に歩いていると、ユーリカの神授の儀を担当した新米神官のミーアさんを発見する。


 原作【最弱聖剣士の成り上がり】では、よくラウルを誘惑していたセクシー担当。そのミーアさんは現在、


「ウォルター先生って凄くたくましいんですのね」

「ま、まあ、鍛えているからな」

「本当に素敵な肉体美ですわ♪」

「いやぁ、はははは」

「……ウォルター?」

「!? テ、テシェイラ!?」


 こっちはこっちで別のラブコメが展開していた。

 ラウルがユーリカと結ばれたという情報はあっという間に学園中へ拡散していた。暴走事件もあったりしたが、今やラウルの評判はすっかり持ち直していたこと、さらに、ふたりが幼馴染で昔から想い合っていたということもあって、クラスメイトたちは漏れなく祝福モード一色であった。


「うーん……ミーアさんって原作通りにならなくてもあんな感じなのか」


 これは余計なトラブルを巻き起こしそうだなぁ――なんて見ていると、


「遅くなってすまない、ミーア」


 ミーアさんと同じ年くらいの優しそうな男性が声をかけた。


「おっそーい。バツとして今日はあなたの奢りね♪」

「んぐっ!? ……しょ、しょうがない」

「もう、冗談よ。ふふ、すぐ真に受けちゃうんだから」


 ああ、これはあっちが本命の人ですね。

 ていうか、ウォルター先生は普通にからかわれただけか。


 テシェイラ先生に怒られているウォルター先生を尻目に、ミーアさんは若い男と腕を組んで歩いていく。


 ふと、横に並んで歩くティーテの顔を見せる。


 原作ではさっきのミーアさんと共にパーティーを組むティーテだが、原作に彼女との会話シーンなんてあったかな。大体、ミーアさんがラウルを誘惑し、それに素直に応じて――というのがお決まりのパターンだった気がする。


 こちらの世界では、もうそれを見ることもなさそうだ。


 ミーアさんにとって、ラウルのハーレム要員になっていた方がよかったのか、それともさっきの男性と付き合っていた方がよかったのか、それは神のみぞ知ることだろう。


 ……ただ、俺の目には今のふたりの方が原作版よりも楽しそうにしている――そう映ったのは間違いない。


  ◇◇◇


 ティーテと楽しく会話をしながら、寮の前まで来た時だった。


「バレット、ティーテ、少しいいか」


 呼び止められて振り返ると、そこには、


「? レイナ姉さん?」


 生徒会長を務めるレイナ姉さんがいた。


「こんなところまで来るなんて珍しいね」

「何かあったんですか?」

「あ、ああ……」


 うん?

 なんだ?

 姉さんにしては珍しく、なんとも歯切れが悪い。

 俺たちへ相談に来るくらいだ……どうやら、相当厄介な事件が起きたと見て間違いないな。


「実は……その……」


 俺とティーテはゴクリと唾を呑んで姉さんからの言葉を待つ。 

 そして、



「ダブルデートをしようじゃないか!」



 まったく予想だにしていなかった提案がなされた。

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