第98話 嫌われ勇者、思い出す
【お知らせ】
※以前、原作におけるラウルのハーレム要員は6名と書きましたが、読み返してみたらバレットの姉を含めて7人ですね……訂正しておきます!
原作【最弱聖剣士の成り上がり】におけるラウルのハーレム要員――そのひとりである、見習い女性神官のミーアが、ユーリカの神授の儀を行うことになった。
……複雑だ。
いや、あくまでもハーレムを築くのは原作での話。
あれはユーリカとの仲が改善されず、最悪の道を進んだ結果だ。
学生寮へ戻る道中、俺は原作の登場人物を思い出していた。
総勢七名のハーレム要員。
彼女たちを属性で分けるなら次のようになる。
【同級生】
【お姉さん】
【先生】
【後輩】
【妹系】
【お色気】
【ドジっ娘】
この中で、【同級生】はティーテ、【先生】はテシェイラ先生、【お姉さん】はレイナ姉さんが枠を埋める。残りの四人のうち、このミーア神官は――【お色気】枠を務めるのだ。
しかし、まさか学生のうちに他のハーレム要員と顔を合わせることになるなんて思いもしなかった。原作だと、確か卒業後に出会うはず。
……だけど、だったら誰がユーリカに神授の儀を受けさせようと進言したのだろうか。俺は原作を読んでいたから、ユーリカの隠された資質を理解している。だが、原作には何の情報もなくそのことに気づいたヤツがいたはずなんだ。
さすがにそこまでは原作で言及されていない。
そもそも、ユーリカは原作において、WEB版の最新話まではチョイ役という扱い。主人公ラウルと共に貧民街で生活していたってこと自体、俺はこの世界へ転生して知ったのだ。それくらい、情報の少ないキャラである。
一体、誰が、なんの目的でユーリカを――
「あっ! バレット!」
その声に、俺はハッとなって顔を上げる。
すると、目の前には天使――じゃないけど限りなく天使に近い存在ことティーテがいた。
「今帰りですか?」
「ああ。ユーリカの件でね」
「何か進展が?」
「うん。とりあえず、近いうちにユーリカは神授の儀を受けることができるようになったよ」
「えっ!? 本当ですか!?」
喜びのあまり、ティーテはピョンと小さくジャンプ。
その可愛らしい仕草に思わず頬が緩む。
「本来なら難しいんだけど、ちょうど新米の女性神官が実習も兼ねて神授の儀を行うらしいから、それをユーリカにやってもらおうと思って」
「…………」
ぬ?
突然ティーテが押し黙り、俯いてしまった。
な、なんだ?
何かまずいこと言ったかな?
あっ!
もしかして、女性神官ってところに引っかかっているとか!?
「ティ、ティーテ?」
恐る恐るティーテの顔を覗き込んでみる。
すると――ティーテは泣いていた。
「!? ご、ごめん!」
訳が分からず、とりあえず謝る。
すると、
「違うんです……嬉しくて」
ティーテがか細い声でそう言った。
「バレットが私だけじゃなく、ユーリカのことにも一生懸命になってくれて……本当に、本当に嬉しいんです」
「ティーテ……」
思わず、俺はティーテを抱きしめる。
「!? バ、バレット!?」
「ごめん……でも、もうちょっとこのままで」
「あうぅ~……」
恥ずかしがりながらも、ティーテは受け入れてくれた。
さっき、ラウルのハーレム要員の話を思い出した時、原作でのティーテの扱いも同時に思い出していた。
本来の想い人であったバレットと最悪の形で別れ、次に結ばれたラウルとの関係もだんだんと薄れていった。
ティーテは寂しがり屋な女の子だ。
原作だと、仲の良かったジャーヴィスとユーリカのふたりが途中退場となり、ストーリーが進むほどに孤立していった印象さえある。
それがこうして、本来得るはずだった幸せを手に入れて、本当に嬉しそうにしている。その姿を見ていると、俺まで嬉しくなってくるのだ。
そうだ。
ラウルだって、ユーリカとの関係が改善すれば一筋になるはず。原作でハーレムを作ったのだって、ユーリカとの関係悪化が招いた産物にすぎない。
「ティーテ……ユーリカは大丈夫だ。きっと全部うまくいく」
「はい……」
お互い、抱き合う力は自然と強くなっていった。
――結局、ウォルター先生に発見されて「仲がいいのは結構なことだが、あまり見せびらかすようなマネはしないように」と注意を受けるまで、俺たちは抱き合っていたのだった。
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