第94話 嫌われ勇者、見誤る
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「マイホーム・ドラゴン ~手乗り霊竜とその孫娘を連れて行く自由気ままな冒険譚~」
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ユーリカに自信を持ってもらうため、テシェイラ先生に魔法使いとしての資質をチェックしてもらうことになった。
原作での流れを知っている俺からすれば結果は分かり切っている。
これでユーリカも自信を持ち、ラウルとの接し方にも変化が表れてくるはず。
そう確信していたのだが――
「今回ばかりは……さすがの君も見誤ったみたいだね」
「っ!?」
その言葉に、俺は絶句した。
原作の通りならば、ここでユーリカの力が発覚するはず。
だが、テシェイラ先生の診断結果は、
「彼女の魔力量や質は一般的に比べて秀でているものではなかったよ」
というものだった。
「そ、そんな……」
「彼女に何か光るモノを見出したのかな?」
「え、えぇ……ユーリカには魔法使いの資質があるものだと……こ、根拠はありませんが」
さすがに原作を見ていましたなんて言えないしな。
俺はゆっくりと振り返る。
ティーテとジャーヴィスに挟まれたユーリカは、ニコッと微笑んだ。
「ありがとうございました、バレット様」
「えっ?」
唐突にお礼を言われて、俺は思わず間抜けな声で返事をしてしまった。
「私のために、魔力診断を受けるよう勧めてくださり、感謝しています」
そう言って、ユーリカはペコリと頭を下げた。両脇に立つティーテとジャーヴィスの表情も柔らかなものだった。
どうやら、三人は俺がユーリカを励ますためにここへ連れてきたと思っているらしい。
いや、まあ、実際そうだし、なんだったらここでユーリカの覚醒イベントが始まるんじゃないかってくらいには期待していた。
が、その期待は結局肩透かしに終わったのだった。
◇◇◇
ユーリカは明日にもメイドとしての仕事に復帰できるということで、一旦その場は和やかなムードで終わりを迎えた。
しかし、根本的な解決には至っていない。
クラスの用事で職員室へ行くというジャーヴィスと別れ、ティーテと共に寮へと戻る道を歩いている途中も、ずっとそれが気になっていた。
このままでは、ユーリカもラウルも救われない。
原作ですれ違いっぱなしだったけど、本当は想い合うふたりを何とか近づけたかったのだが……それは叶わなかった。
それにしても、なぜユーリカの資質は見抜かれなかったのだろう。
あのテシェイラ先生のことだから、見落としているとも思えない。
考えられるパターンはふたつ。
ひとつは、原作とまったく違う流れになってきている。
もうひとつは、覚醒イベントに向けてのフラグが不十分だった。
これまでの経験から、俺自身の存在を除くとそこまで原作ブレイクしている展開になっているわけじゃない。
となると、後者の方が可能性は高いってことになる。
その時、ティーテが俺の顔を見ながら口を開く
「バレット? ユーリカの件で考え事ですか?」
「! よ、よく分かったね」
ズバリ言い当てられた。
なんだか、最近は考えている内容までも読み取られてしまうな……。
「ユーリカはバレットに心から感謝していましたよ? 『ただのメイドである自分にここまでしてくださるなんて』って感動していたくらい」
「……だけど……」
「それに、私だってとても感謝していますし、嬉しかったです。私の家のメイドなのに、あんなに親身になってくれて……」
「ティーテ……」
ティーテはそうフォローしてくれるが、俺の胸中にはなんとも言えないもどかしが残っていた。本来なら、ユーリカは凄い素質を持っている。だけど、どういうわけかそれが表に出てこない。
何か、他にきっかけがあるのか……?
「そんなに思いつめないでください、バレット」
「あ、ああ……」
とは言うものの、やっぱ気になっちゃうよなぁ……。
「バレット……」
「じゃあ、今度は私がバレットを励ましてあげます!」
ティーテは胸を張ってそう告げるのだった。
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