第93話 ユーリカの気持ち

【CM】

新作「マイホーム・ドラゴン ~手乗り霊竜とその孫娘を連れて行く自由気ままな冒険譚~」の最新話も投稿しました!


こちらもよろしくお願いします!


https://kakuyomu.jp/works/1177354055033755686


…………………………………………………………………………………………………





 ユーリカの真の気持ちを聞きだすため、俺たちは病室を訪れた。


「み、みなさんどうしたんですか!?」


 突然の来訪に驚くユーリカ。 

 おまけに、今回はジャーヴィスもいるということで余計に緊張しているようだ。あと、やはりラウルの告白の件も、俺たちに対するギクシャクした態度につながっていると思われる。心なしか、顔も赤い気が。


「今日は君のお見舞いに来たのはもちろんだが……いろいろと聞いておきたいことがあったんでね」

「あっ――」


 皆まで言わずとも、それだけで俺が知りたがっていることを感じ取ったらしい。察しがよくて助かるよ。


「分かっているとは思うが……この前のラウルの件だ」

「うぅ……」


 答えづらそうにしているユーリカ。

 いきなり告白の返事はハードルが高すぎたか。

 だったら、


「俺たちはふたりの過去に何があったのか知りたい」


 アプローチを変えてみる。

 すると、ユーリカの口がゆっくりと動きだした。


「ラウルは……私を裏切ったんです」


 重々しい口調で、ユーリカは告げる。

 裏切りとは……穏やかな表現じゃないな。

 しかし、そう語ったユーリカの表情は同時に今の発言を悔いているようにも映った。もっと言えば――本心はまったく別のことを思っているような。


 そんなユーリカの独白はまだ続く。


「あの告白だって……きっと本心じゃないはずです」

「そ、そんなことないよ!」


 必死に訴えるティーテ。

 だが、ユーリカは譲らない。


「ティーテ様……私には分かるんです。ラウルが私なんかを好きになるはずがないんですよ」

「……うん?」


 今のユーリカの言葉に違和感を覚えた。

 それじゃあ、まるでラウルが本心から告白していないように聞こえる。

 だけど、あの時のラウルの真剣な眼差しは、とても嘘を言っているようには思えなかったのだが。


「ラウルはとても才能があるんです。ただとても不器用で、自分の力をうまく使えないだけなんです。そんなラウルが、聖騎士様の弟子になって、徐々に周りから認められるようになっていって……私なんて本当は眼中にないはずなんです」

「いや、それはないと思うぞ」


 俺は即座に否定するが、ユーリカは信じていないようだった。

 これはあれか。

 貧民街での生活が長かったせいか、随分と卑屈になっている。

 自分とラウルの間にある才能の壁に落胆しているようだ。


 ――待てよ。

 才能といえば……ユーリカにもあるじゃないか!


「なあ、ユーリカ」

「な、なんでしょうか?」

「ちょっとついて来てくれないか?」

「えっ?」


 俺の提案に、ユーリカだけでなくティーテとジャーヴィスも驚く。

 そりゃそうだろうな。

 ふたりにも言っていない、たった今思いついたことだし。


「い、一体どこへ行くというのですか?」

「テシェイラ先生のところさ」

「「「テシェイラ先生?」」」


 三人の声が重なった。

 まあ、なんの脈絡もなく名前を出したから驚くのは無理ない。

 だけど、あの人ならきっとユーリカの資質を見出してくれるはず。


 原作では類稀な魔法使いの素質を持つとされるユーリカ。

 魔剣使いとして名をあげてきたラウルに対し、何もないと思い込んでいるユーリカは卑屈な態度を取ってラウルを遠ざける傾向にある。

 あの告白の件だって、ここまで話した感じだと告白自体に嫌な印象は持っていない――それどころか、ラウルからの告白が信じられないと思っている。

 その原因は、ユーリカの自信のなさから来ているのではないか。

 ラウルは自分を奴隷商から救ってくれたし、学園では聖騎士クラウスに弟子入りし、頭角を現し始めていた。

 同じ貧民街の住人でありながら、天と地ほどの差がある。

 ユーリカは自身とラウルを比較し、そう思っているようだった。


 ――だったら、並び立つほどの力を持てばいい。

 原作の通りなら、ユーリカの魔法使いとしての資質はとんでもなく高いはず。それが分かればユーリカも自信を持ってラウルと接することができる。


 これですべて解決するはずだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る