第84話 異変
【CM】
本日、作者がカクヨムに投稿している「無敵の万能要塞で快適スローライフをおくります ~フォートレス・ライフ~」の第3巻が発売となります!
コミカライズも決定していますので、まだお読みになっていない方は是非!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054889433953
本作「嫌われ勇者」の書籍化企画も現在進行中ですよ~
※次回投稿は12日(木)の予定です!
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ダンジョンの中は思いのほか快適だった。
もっとこう、暗くジメジメした場所を想定していたのだが、全然そんなことはなく、等間隔で明かりの灯るランプが設置されているため、これといって問題なく進める。
なるほど。
初心者向けって話だったけど、こういった面があるからなんだな。
ダンジョン内を行くメンバーは俺を含めて四人。
――ただ、心配だということでアルバース家、エーレンヴェルク家、レクルスト家の関係者が各所で様子を探っているのは明らかだった。
表向きは「干渉はしない」と宣言していたのに……まあ、直接何か言ってくるわけじゃないから、本人たち的には干渉していないってことなんだろうけどさ。
とりあえず、メンバーを振り返ろう。
ティーテ。
ジャーヴィス。
そしてユーリカ。
ここにラウルを加えれば、原作【最弱聖剣士の成り上がり】における勇者パーティーの完成だ。
「さて、どんなモンスターが出るかな」
「で、できれば戦闘は避けたいですけど……」
「もともと出現率は低いみたいですから、出てこないかもしれませんよ?」
とてもダンジョン内を歩いているとは思えないくらい暢気な会話が聞こえてきた。
まあ、確かにこういった場所へ来るのは初めてだけど、実力に関してはユーリカ以外申し分ないメンツだからなぁ。
そのユーリカも、原作では世界でも屈指の魔法使いとして名を馳せているのだから、ポテンシャル自体は相当高いのだろう。今はまだ、その片鱗さえ見せていないけど。
しばらく進むと、何やら光が見えてきた。
設置されたランプとは異なる白光。
「なんだ……?」
危険を伴う物かもしれないので、俺たちはゆっくりと慎重に近づいてき――その正体を知った。
「どうやら、ダンジョン内の鉱石のようだが」
ジャーヴィスはそう言って、光のひとつへ手を伸ばす。
確かに、光の正体はダンジョンの壁にある発光する石のようだ。
「発光する石か……」
「学園の授業でもやりましたね。発光石は人々の生活に欠かせない物だって」
ティーテの言う通り、発光石の重要性については経済史の授業で習った。多くのダンジョンに分布し、また、加工も容易であることから単価は安い。だが、生活必需品であるには違いないので、需要は多い。
「記念に一個持ち帰りましょう!」
「賛成だね。僕たちの思い出の品にしようか」
「いいですね! バレット様は?」
「もちろん、俺もそうするよ」
特に価値のある品ではないが、俺たちがパーティーを組んで挑んだ最初のダンジョンで最初に発見したアイテム。これは確かに記念品として持ち帰るには大きさもちょうどいいな。
俺は専門の道具を取り出して発光石を壁から引きはがすと、それをまずはティーテへと手渡した。
「わあ……とっても綺麗ですね」
「あ、ああ」
うっとり見つめるティーテ。
ここで「君の方が綺麗だよ」と言えばいいのだろうが、さすがにキザすぎるかなって心配とジャーヴィスやユーリカのいる前で格好をつけるような発言はためらわれた。……今さら手遅れって気がしないわけじゃないけど。
そんな感じで盛り上がりながら、人数分の発光石を壁から引きはがし終えた直後だった。
ダンジョンの奥から何やら大きな音が。
「な、なんでしょう……」
「聞き慣れない音だな」
怯えるティーテを背後に回し、俺は聖剣を構える。
同時に、ジャーヴィスも臨戦態勢を取る。
ユーリカも拳を作って何やら構えているが……えっ? まさかの肉弾戦?
思わぬユーリカの行動に驚いていると、大きな音の正体が姿を現した。
「ぶもぉ!」
鼻息荒く突進してきたのはイノシシ型のモンスター。
名前はブラック・ボア。
その名が示す通り、体毛は闇夜のごとき漆黒で、体長は優に三メートルを超える。
「大物だね、バレット」
ジャーヴィスがこちらへ視線を向ける。
「ああ。恐らく、このダンジョンに生息する最強クラスのモンスターだろうな」
最強――とは言ったが、あくまでもこのダンジョン内での話。
大きさ、パワー、スピードと、厄介な面は多々あるが、いずれも飛び抜けて驚くべき数値というわけじゃない。
もっといえば、この程度の敵におくれを取っているようではまだまだと言える。
「初戦闘だ。派手に行こうじゃないか」
「賛成だね」
「が、頑張ります!」
俺とジャーヴィスとティーテは気合十分。
……って、あれ?
ユーリカの声が聞こえないような。
「ユーリカ?」
「…………」
ユーリカは無言で正面のブラック・ボアを睨みつけていた。
その様子はこれまでとまったく異なる。
まるで……暴走する直前のラウルを彷彿とさせる雰囲気をまとっていた。
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