第83話 いざ、ダンジョンへ!

※次回は10日(火)に投稿予定!





 庭園で花とティーテを堪能した後、昼食をとってからダンジョンへと向かう。

 ちなみに、メイド三人衆はお留守番だ。

 今回は俺たちだけでダンジョンに潜る。


 ダンジョン――とはいっても、話を聞く限り、新しく発見されたここのダンジョンはかなり攻略難度が低いらしい。凶悪なモンスターところか、そもそもモンスター自体がほとんど出現しないというレベル。だから、父上たちも俺たちだけでダンジョンへ来ることを了承してくれたのだろう。この辺りは治安もいいしな。

 恐らく、原作でクラウスさんたちがここへ潜った理由はティーテがいたからだろう。

 正直、今の俺たちの実力からしたら物足りない。

 だけど、今回のダンジョン探索は何も攻略を念頭に置いているわけではない。


 難易度が極端に低いということもあって、このダンジョンは半ば観光用として扱われているようだった。

 戦闘能力皆無の者たちでも潜れるので、誰でも冒険者気分が味わえる。

 もはやレジャー感覚だ。

 最近じゃあ、町おこしの一環として利用されているようで、一層入りやすくなっているのだとか。


 そんなダンジョンの入口で、ジャーヴィスと合流することになっている。

 あと、ユーリカも同行する予定だ。

 そして――もし、原作通りに話が進めば、あの場所にラウルもやってくるはず。

 そうなれば、原作における勇者パーティーが揃い踏みとなるのだ。


 ただ、今回の目的はただの顔合わせというだけではない。

 やはり、ずっと気になっているラウルとユーリカの関係性について明らかにしておかなくてはならないと思い、それをハッキリさせるためのダンジョン探索でもあるのだ。

 

 さて……どういった結果になるかな。



 俺たちが馬車でダンジョンに到着すると、すでにジャーヴィスが待ち構えていた。


「遅かったじゃないか」

「すまない。庭園を見て回るのに夢中になっちゃって」

「庭園を?」

「ああ。なっ? ティーテ」

「はい♪」

「ふーん……」


 あれ?

 なんかジャーヴィスの声がいつもに比べて低いような?

 それに、顔つきもどこか険しい。

 今は正体を知っている仲なんだから、わざわざそんな声を出さなくてもいいのにな。


「あ、あの……ティ、ティーテ様」

「何? ユーリカ」

「……い、いえ! なんでもありません! ダンジョンでも必ずお守りしますのでご安心ください!」

「ふふふ、頼りにしているわね」


 本当は怖いのに強がってティーテを守ると宣言するユーリカ。


 そう。

 それもまた俺が疑問を抱いている点のひとつ。

 原作でのユーリカは世界でも屈指の魔法使いという設定だ。

 七つの魔法属性すべてを華麗に操り、何事もそつなくこなす天才肌。

 俺が――いや、【最弱聖剣士の成り上がり】の読者の大半は、彼女にそういったイメージを抱いているなずだ。

 しかし、俺が出会ってからのユーリカというのは、そういった世界からはまったく縁遠いところにいた。ここまでの間で、魔法の「ま」の字すら感じさせない。そもそも学園の生徒じゃなかったわけだしなぁ。

 

 この謎も、解いていかないとな。


 なぜ、普通のメイドが世界でも屈指の魔法使いとなり、救世主パーティーにその名を連ねるようになるのかを。



 とりあえず、現状でのメンバーは揃ったので、ダンジョンへと潜ることに。

 この段階でラウルは合流していない。

 

 もしかしたら、すでにダンジョンの中にいるのかも。


「さて、じゃあそろそろ行こうか。……派手に暴れたくなってきたよ」

「ティーテ様! 私がついていますのでどうかご安心ください!」

「ユーリカは頼りになるね♪」


 それぞれの想いを胸に――いざ、ダンジョンへ!

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