第77話 因縁のふたり?

※次回投稿は10月28日(水)の予定です。

 ちょっと間があいて申し訳ない……






 これは……原作では言及されていなかった流れだ。


 勇者パーティーの魔法使い(予定)のユーリカと、主人公ラウルにはパーティーを組む前から接点があった。

 そもそも、原作でこのふたりだけでの掛け合いはほとんどなく、ユーリカの認識もバレット(前)とジャーヴィスの腰巾着ってくらいしかない。


 しかし……どうもただならぬ関係ではありそうだ。

 結局、ラウルはクラウスさんを引っ張って昼ご飯を食べず、そのまま逃げるように修行の旅へと戻っていった。


 これは明らかに、原作と違う分岐だ。


 原作では、ティーテと共にクラウスさん指示のもと、モンスター討伐クエストへと参加しているため、この時点でユーリカとの接点はない。

 ――だが、本当はすでに面識があった。


 となると、その場所は恐らく……ラウルが学園へと来る前に生活していたという貧民街で出会ったってことか。


 ラウルが逃げるように去ったところを見ると、あまり良好な関係とは言えなさそうだ。その後のユーリカはいつも通りに振る舞っていたけど……彼女の素性については、かなり過去まで振り返らないとダメみたいだな。


 もしかしたら……原作版のバレットやジャーヴィスとは違い、ユーリカがラウルを目の敵にしていたのは、何か私怨めいたものがあったからなのかもしれない。


 ラウルとユーリカ……ふたりの過去に一体何があったっていうんだ……。




 昼食後。


 俺とティーテはふたりでサリアス湖の畔まで来ていた。


「うおぉ……近くで見ると本当に綺麗で大きな湖だな」

「なんだか圧倒されちゃいますね」


 俺たちは感動。

 そこからちょっと離れた位置では、レベッカとプリームが釣りを楽しんでいた。それにしても……プリームならまだしも、まさかレベッカがフィッシングガチ勢だとは思わなかった。あれでいて結構アクティブなんだな。


 それはさておき、この湖で、ラウルと聖騎士クラウスさんに邪魔されたデートの続きをしよう。

 ラウルとユーリカについてはその後だ。


 俺たちは並んで桟橋の端へ座り込む。


「よいしょっと」


 湖があまりにも綺麗で涼しげだったため、俺は思わず裸足になってそのまま突っ込んだ。


「うおっ! つめたっ!」


 思ったよりも水温が低くてたまらず声が出た。

 すると、


「私もやってみます!」


 ティーテの好奇心に火がついたらしく、俺と同じように素足を水につけた。その反応は、


「ひゃっ!?」


 俺と同じだった。


「だ、大丈夫か、ティーテ?」

「は、はい……湖の水って冷たいんですね。でも気持ちいいです!」

「ああ、まったくだな」

 

 ふたりで一息をつきながら、これまでの学園生活を振り返った。

 思えば、学園生活は良いことも悪いことも……とにかくいろいろあった。

 バレットが犯してきた、さまざまな問題。その尻拭いのため、学園を奔走した。おかげで、後半からは心置きなくティーテと一緒にいることができたが。


 今もこうして横にいられるわけだし。


「そういえば、今日の夜のパーティーで着るドレスって――」

「バッチリです! お母様と一緒に選びました!」


 リリア様お墨付きのドレスか……実に楽しみだな!


「……でも、ちょっと心配なことが」

「えっ? 何?」


 もしかして、デザインが気に入らないとか?

 だとしたらそれは問題だが――


「その……学園の舞踏会で着た物より……肌の露出が多くて……バレットに気に入ってもらえるか……」


 まったく問題なし。


「大丈夫! ティーテなら何を着ても似合っているさ!」

「あ、ありがとうございます」


 頬を朱に染めて、ティーテがお礼を言う。

 そんな態度を取られると……パーティーが待ち遠しくなるじゃないか。

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