第74話 嫌われ勇者と新米メイド

※ 次回投稿は10月21日(水)を予定しています。

  時間はいつも通り、正午です。


  ペースとしては1,2日に1話。

  週最低3話は投稿していきたいと思っています。

  

  よろしくお願いします!


…………………………………………………………………………………………………




 モンスター討伐バイトで知り合った少女ユーリカ。


 原作【最弱聖剣士の成り上がり】に登場する勇者パーティーのひとり――《魔法使いのユーリカ》ではないかと睨んでいた俺だったが、その後の接点がなさそうという理由で「別人かもしれない」という疑惑を抱いていた。


 だが、そのユーリカがティーテの新しい専属メイドとなり、休み明けから学園にも通うようになるという。

 こうなると、このユーリカが原作に出てくる五人目のメンバーということでほぼ確定となるだろう。


 さて、どうなることやら……。


 ◇◇◇


 夕食。

 

 両親に学園での生活を報告。

 特に今回はラウルの暴走や舞踏会での一件などトラブルが多かったため、両親も心配していたようだが、俺とティーテは至って穏やかに学園生活を謳歌していることを伝えると、ふたりともホッと胸を撫でおろしていた。


 一方、レイナ姉さんからは、


「君たちの仲が良いのは分かったが、学園内であまり派手に仲良くしていると、反感を買う恐れもあるから気をつけるんだぞ」


 そんなお叱りを受けてしまう。

 

「そ、そんなに悪目立ちしていたかな?」

「毎日ということではないが……気がつくとふたりだけの世界を構築しているだろう?」


 う、うーん……あまり自覚はなかったんだけど。姉さんの分析力は確かだし、たまにジャーヴィスからも似たような指摘を受けていたことを思い出す。


 ティーテに視線を移すと、顔を真っ赤にして俯いていた。

 どうやら向こうも自覚はなかったらしい。


その後、姉さんは小声で「アベルさんはどうして卒業してしまったのだろう」とつぶやいていたが、できる弟の俺はあえてそれをスルーした。



 夕食を終えると、俺はティーテと一緒に自室へと戻った。

 そこで、マリナたちが淹れてくれた紅茶を飲みながら、談笑したり、明日以降の計画を確認したりする。

 学園と違って消灯時間はないから、眠くなるまでたっぷりと話せるな。

 とはいえ、明日は大事なイベントを控えているため、夜更かしは禁物だ。


 そのイベントとは――《お弁当を持ってピクニック》である。

 標高の高い避暑地ということで、夏であっても涼しくて過ごしやすい環境だし、自然豊かであちこちに絶景が広がっている。デートにはもってこいだ。


 もちろん、俺たちの立場を考えれば、ふたりきりというわけにはいかない。

 当日はマリナたちメイド三人衆に加えてユーリカも参加する予定となっている。ちなみに、ユーリカも一緒に行く予定だ。


 どうやら、三人はユーリカに懐かれたらしく、特にマリナは「私たちが責任をもってこの子を育てます」と高らかに宣言。

 そのため、俺たちが話している部屋のすみで、今もメイドのなんたるかをレクチャー中だ。


「熱心ですね、ユーリカ」

「そうだな……」


 ……信じられない。


 真剣な顔つきで、マリナたちの話に耳を傾けるユーリカ。

 真面目で素直で明るい――そんな彼女が、なぜバレット(前)のパーティーに加わり、悪事に加担をするようになったのか。


 ジャーヴィスは自身の性別に関する秘密を握られたことで言いなりになったと思うが……ユーリカについてはまったくもって不明だ。ここからどうやったら、原作版のようなひねくれ者になるというのか。


「そういえば、パーティーも気になりますね!」

「あ、ああ、そうだね。いろんな人を招待するって言っていたし、賑やかになりそうで楽しみだよ」


 明後日にはアルバース家が主催するちょっとしたパーティーを行う予定となっている。

 これは毎年恒例のことで、リステンの町長や他の貴族も参加する。


「明日は晴れるといいですね♪」

「ああ」


 俺たちは笑い合いながら、明日の晴天を祈った。

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