第4話

亜空庫を確認するとそこには収集癖があった自分に感謝したいと言わんばかりに大量のアイテムが収納されていた。


 1.ポーション:体力回復、魔力回復、防御力アップ、攻撃力アップ、素早さアップ


 2.食料:各種モンスターの肉、魚、果物、お菓子


 3.素材:各種モンスターの角、皮、羽など 珍しい所では黒竜の角、不死鳥の羽、ガイアタートルの甲羅など


 4.魔石:各属性魔力のこめられた魔石


 5.武器:剣、槍、短剣、刀、斧など ランクの高いものでは魔剣、妖刀、聖槍など


 6.防具:各部位の防具 ランクの高いものでは常闇のマント、光星の鎧、明星の兜など


 7.道具:マジックテント、水精のカップ、捌きのナイフなど各種便利アイテム


 8.お金:王金貨、白金貨、金貨、銀貨、銅貨(千年前と同じ貨幣が使われている)


 などなど、細かく挙げていけばキリがないほどのアイテムであった。



 この世界の貨幣は過去には精度の低い貨幣が流通しており、それを知ったある男が精巧な貨幣を作る技術を開発する。


 それは地球の現代の技術が使われているかのように、高い品質をほこっていた。それからも製造方法に新しい魔道具などが導入されることはあったが、男が生み出した以上の技術で作られた貨幣が生み出されることはなく、また統一国家が存在しないため、現代でも千年前と同様の貨幣が使われていた。



 当時のパーティメンバーには亜空庫のことは話してあったため、ほとんどのアイテムは蒼太が保管していた。


 処分してもいいと言われたものも亜空庫にいれていたため、膨大な量になっている。



「これはすごいな、みんなが最初の頃装備してたものまで入ってる。魔石も素材も売ることなく貯めてたからなあ」



 亜空庫は通常のものは物を収納できるだけの空間だが、蒼太は現代知識を利用し改造をしている。


 パソコンでのフォルダ分けの要領で、アイテムを収納できるようにしアイテム名から検索も行えるようにしている。


 フォルダ確認用のユーザーインターフェースはステータスプレートを応用して自分だけに見えるタブレット形式になっている。


 ちなみにアイテム名は収納された際に自動でそのものの名前が表示される簡易鑑定機能付き。



 その中からいくつかのアイテムを出す。


「まずは偽装の腕輪をつけてっと」


 腕輪をつけ、魔力を通すと髪の色が濃い青色に変化する。


 服も支給されたものから自分の所有していたものへと着替える。


「次に怪しまれない程度の武器防具は」


 前回召喚時、低ランクの冒険者の間でポピュラーな装備であった鉄の剣、軽鉄の胸当てを身につけた。



 着替え終わると道には戻らずに森の中を抜けて行くことにした。


 生まれつき方向感覚に優れている蒼太は迷いなく森を抜けようとしたが、ふと足を止める。


 なにやらあたりの空気が重くなっており、森の奥から強い気配を感じていた。



『気配察知スキルを習得しました』



「は? こんなもんでスキルが手に入るのか?」


 蒼太は疑問に思ったが使えるものは使おうと再度気配に集中する。


「100は超えてるな……その中でも気配がでかいのが何体か……やるか」


 そう決めると蒼太は走り出しその気配へと向かっていく。


 近くにたどり着くと、大きな魔力溜りがありそこにはハイオーク、オークジェネラル、オークキング、ビッグボア、キングボア、ハイゴブリン、ジェネラルゴブリン、ゴブリンキングなどなど、様々なモンスターがひしめきあい進化のために魔力溜りから魔力を吸収していた。


「これはまずいな。魔物大暴走一歩手前じゃないか」


 そうつぶやくが足を止めることはなく、表情にも焦りは見られなかった。



 装備したばかりの鉄の剣を抜くとそのまま魔物の集団の中に突っ込んでいく。


 本来であれば鉄の剣では傷をつけるのも難しく、それどころか一太刀いれるだけで折れてしまうほどの相手。


 ランクの低い武器であるから使い捨てにするのは問題ない、しかし集団戦で武器がなくなってしまうことは避けなければいけないことだった。


 しかし、蒼太の鉄の剣は折れることなく次々に魔物を切り裂き倒していく。


 中央に近づくにつれ高ランクモンスターになっていくが、それすらも問題なく進んでいく。


 蒼太は鉄の剣に魔力をまとわせていた。その魔力は敵のランクが上がるに連れて強化されていく。


 鉄の剣のみで周囲の低ランクモンスターから中ランクモンスターの撃破が終わると、武器を持ち替える。



 蒼太が足を止めた先にはオークキング、キングボア、ゴブリンキングなどのキングクラス。更にその上となるエンペラーウルフもそこにはいる。


 キングクラスはそれぞれ一から二体、エンペラーウルフは一体おり蒼太を睨みつけている。


「さすがにこいつら相手じゃ鉄の剣は持たないからな」


 その手には魔刀十六夜が握られており、既に魔力も込められているため刀身は蒼い光を放っている。


 止めた足に再度力をいれ魔物達の中央へと走り出す。



「グオオオオオオオオオオォ」


 オークキングは手に持った巨大な槍を蒼太へと突き出す。キングクラスだけありその速度は見た目に似合わず素早く、鋭い一撃が放たれる。


 しかし、その一撃は蒼太にとっては先ほどの兵士と変わらないものであり同じように避け左手で掴むと、槍を持つ巨体ごと持ち上げ他のモンスターのほうへと放り投げる。


「ブオオオオオオオォン」


 投げた瞬間に見せた隙にキングボアが二体同時に鋭い牙で体当たりをしてくる。それも避けすれ違いざまに斬りつけその胴を真っ二つにする。


 ゴブリンキングは魔力を持っており、一体は炎の魔法、一体は氷の魔法を、それも高ランクのフレアストーム、アイスフレイムを詠唱している。


 蒼太から距離をとっており、詠唱を中断させるには間に合わない。


「「グギャアア」」


 そして同時に魔法は放たれる。



 十六夜に込める魔力を強化し二つの魔法を斬り裂く、そして魔法の余波ダメージを防ぐため空間魔法で結界を張る。


 その間、足を止めずゴブリンキングへと走りより十六夜の一太刀を浴びせ絶命させていく。


「キングくらいならこんなもんだが……あいつは手ごたえがありそうだ」



 能力を測るために離れていたのか、エンペラーウルフは距離をとり蒼太を睨んでいる。


 今までの魔物とは違い、油断や驕りというものは感じられずうかつに襲いかかってくるということはなかった。


 蒼太も隙を作って攻撃を誘うような真似はやめ、十六夜を構える。


 すると予想外のことがおきた。




『貴様は何者だ?』

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