第20話 イメチェン!?

 高校に着く。

出発は遅かったが、やっぱり近いな。いつも着く時間とさして変わりない。

 あるある(?)というか当たり前なのだが、基本朝練がない人は到着時刻がおっそろしく遅い。朝礼が始まるギリギリで来る人がほとんどだ。

何を云いたいかというと…


「人多すぎだろ…」

「そ、そうだね…」


一応進学校なので、帰宅部も一定数いるのだが、それでもおかしい。


「まあ、テスト期間だからね。」


 美鈴がこっちを見ずに言う。

そうか、テスト期間なら、部活停止期間だ。


 それにしたって、なんでこいつらゆっくり話しながら歩くんだ?遅刻するぞ?


「すいません、通ります!」


そう云って人を押し抜けながら、階段を上がる。一年の教室は2階だ。


「ねえ、あの子だれ!?めっちゃカッコいいじゃん。」

「見たことないね?でもモデルやれそう。」

「それな、あいつ転校生?それともどっかアジア系からの留学性とかか?」

「どっちにしても気になるね。肌凄い綺麗だし、SNSとかやってたらきっとフォロワー数えぐいよ。」


 なんだ?そんなリア充がいるのか?とにかく、頼むから僕が見ないところで色事はやってくれよ。





 教室まで来て、ふと思う。あれ、なんか違和感ないか?


「おはよう!佐々木くん、山崎っじゃなかった西浜さん。」

「「おはようございます(先生)。」」


そういや、香奈さんの旧姓ってそんなだったなあと思いだす。

あの事件について、少しクラスが湧く。心が痛い。


「みなさん、プライベートな質問は控えてね。」


「…それから、先生的にはそのイメチェンとっっても点数高いけど、派手すぎるアクセサリーはちょっと考えものだよ?佐々木くん。」


「あ!」


 やば、取り忘れてたのか。恥ずかしいな。

さっさと例の髪飾りをとって、ポニーテールに変える。男子用制服には似合わないだろうが、これの方が見やすい。


「(これはこれで)いいね!」

「んん?はあ、わかりました(?)」


「旅人くん!おはよう!」

「おはよう、神崎さん。」

「楽しかったね、昨日の。」


「「「「「デート!??」」」」」


また別の意味でクラスが湧く。

「…まあ、楽しかったね。」


「…………」

美鈴は無言で、こちらを弱弱しくにらみつけるだけ。


「あれ?」

手招きする神崎さんに耳を貸すと…


「今日美鈴ちょっとおかしくない?何かあった?」

「ああ…それは……、まあ少しね。」

(何それ、『察しろ』ってやつなの?)

顔がマジだと悟ってくれたのか、声のボリュームを小さくして聞いてくる。


うーん、まあそうなんだけど。あの内容を想像で察するのは無理だろうな。

ただ、説明するだけなのも味気ない。


(ちょっと僕が襲われただけだから。)

(は!??襲われたって、美鈴に??)


鳩が豆鉄砲を喰らったように、顔を赤く染めながら目を丸くする。

こちらもそれに応じて首を縦に振る。

そうそう、これでいい。


(後で説明するから。もう始業のチャイムが鳴るよ?)

「ちょ、ちょっと…」


言いかけたところで、思っていた通りチャイムが鳴る。

半ば強引に話を終わらせたが、どうしよう、これ。

あれは、特に僕は何もしてないし、説明するのも面倒くさい。

それに多分今日の仕事はないだろうなあ。吐いたし。


髪を掻こうとしたが、今はポニーテールだからそんなんこともできない。

髪も早く切ってもらわないとな。








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