第20話 イメチェン!?
高校に着く。
出発は遅かったが、やっぱり近いな。いつも着く時間とさして変わりない。
あるある(?)というか当たり前なのだが、基本朝練がない人は到着時刻がおっそろしく遅い。朝礼が始まるギリギリで来る人がほとんどだ。
何を云いたいかというと…
「人多すぎだろ…」
「そ、そうだね…」
一応進学校なので、帰宅部も一定数いるのだが、それでもおかしい。
「まあ、テスト期間だからね。」
美鈴がこっちを見ずに言う。
そうか、テスト期間なら、部活停止期間だ。
それにしたって、なんでこいつらゆっくり話しながら歩くんだ?遅刻するぞ?
「すいません、通ります!」
そう云って人を押し抜けながら、階段を上がる。一年の教室は2階だ。
「ねえ、あの子だれ!?めっちゃカッコいいじゃん。」
「見たことないね?でもモデルやれそう。」
「それな、あいつ転校生?それともどっかアジア系からの留学性とかか?」
「どっちにしても気になるね。肌凄い綺麗だし、SNSとかやってたらきっとフォロワー数えぐいよ。」
なんだ?そんなリア充がいるのか?とにかく、頼むから僕が見ないところで色事はやってくれよ。
★
教室まで来て、ふと思う。あれ、なんか違和感ないか?
「おはよう!佐々木くん、山崎っじゃなかった西浜さん。」
「「おはようございます(先生)。」」
そういや、香奈さんの旧姓ってそんなだったなあと思いだす。
あの事件について、少しクラスが湧く。心が痛い。
「みなさん、プライベートな質問は控えてね。」
「…それから、先生的にはそのイメチェンとっっても点数高いけど、派手すぎるアクセサリーはちょっと考えものだよ?佐々木くん。」
「あ!」
やば、取り忘れてたのか。恥ずかしいな。
さっさと例の髪飾りをとって、ポニーテールに変える。男子用制服には似合わないだろうが、これの方が見やすい。
「(これはこれで)いいね!」
「んん?はあ、わかりました(?)」
「旅人くん!おはよう!」
「おはよう、神崎さん。」
「楽しかったね、昨日のデート。」
「「「「「デート!??」」」」」
また別の意味でクラスが湧く。
「…まあ、楽しかったね。」
「…………」
美鈴は無言で、こちらを弱弱しくにらみつけるだけ。
「あれ?」
手招きする神崎さんに耳を貸すと…
「今日美鈴ちょっとおかしくない?何かあった?」
「ああ…それは……、まあ少しね。」
(何それ、『察しろ』ってやつなの?)
顔がマジだと悟ってくれたのか、声のボリュームを小さくして聞いてくる。
うーん、まあそうなんだけど。あの内容を想像で察するのは無理だろうな。
ただ、説明するだけなのも味気ない。
(ちょっと僕が襲われただけだから。)
(は!??襲われたって、美鈴に??)
鳩が豆鉄砲を喰らったように、顔を赤く染めながら目を丸くする。
こちらもそれに応じて首を縦に振る。
そうそう、これでいい。
(後で説明するから。もう始業のチャイムが鳴るよ?)
「ちょ、ちょっと…」
言いかけたところで、思っていた通りチャイムが鳴る。
半ば強引に話を終わらせたが、どうしよう、これ。
あれは、特に僕は何もしてないし、説明するのも面倒くさい。
それに多分今日の仕事はないだろうなあ。吐いたし。
髪を掻こうとしたが、今はポニーテールだからそんなんこともできない。
髪も早く切ってもらわないとな。
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